とうとう試練の時はやってきた。空は快晴、気温は暖かく、心地よいそよ風が吹き、いかにもデート日和である。ケヴィンは城塞都市ジャドでシャルロットを待った。服装は一応、彼の一張羅で決めてある。ケヴィンはそわそわしながらシャルロットが来るのを待った。

シャルロット「ケヴィンしゃ〜〜〜ん!!!!!」

声のする方を見ると、これまた一段とおめかしをしたシャルロットが走ってくる。黄金の髪はしっかりと綺麗にカールしており、帽子も服も僧侶のものではなくて、いつもより大人びたデザインである。靴もいつもと違いサンダルである。慣れないサンダルを履いて駆けているせいか、途中で躓いて転びそうになる。ケヴィンは慌ててシャルロットを受け止めた。ふんわりとしたシャルロットの髪からいい香りがする。ケヴィンはデートを成功させるという緊張も相まって、思わず鼓動が高鳴った。

ケヴィン「…あ、シャルロット、走ると危ないよ」
シャルロット「えへへ。受け止めてくれてありがとさんでちた」

彼らはジャドの町を2人仲よく手をつなぎ、歩いて回る。はたから見るとなんとも微笑ましい光景である。そしてケヴィンはあらかじめ予約しておいた店にシャルロットを案内する。「Little Sweet Cafe」という名の店である。木造の洒落たテーブルと椅子、そこここに観葉植物が植えてある。屋内であるが窓は開け放っており、新鮮な空気が入ってくる。それはホークアイに薦められた店であった。

ケヴィン「シャルロット!今日はオイラのおごりだ!好きなだけ食べていいぞ!」
シャルロット「そうでちか?それならお言葉に甘えて、このジャンボパフェを2人で食べるでち!!!!!」

そこでケヴィンとシャルロットは軽いランチセットとジャンボパフェを頼んだ。2人してチョコやら生クリームやらを口につけたまま一生懸命食べる様は可愛らしい。まだ幼い少年少女のカップルといったところだ。和気藹々とたわいもないおしゃべりをしながら至福の時間は過ぎてゆく。シャルロットは元々甘いものは大好物であったし、ケヴィンは大食漢である。時間はかかったがジャンボパフェを見事たいらげた。



シャルロット「ケヴィンしゃん、次はどこへ行くでちか〜?」
ケヴィン「町の外に出る。ラビの森の近くにお花畑見つけた」

暖かい陽気の中、午後の日差しが降り注ぐ。そんな中をケヴィンとシャルロットは歩き続ける。ケヴィンが見つけたという花畑に辿り着くと、シャルロットは歓声を上げた。

シャルロット「うわあー!綺麗なお花でち!!!!!」
ケヴィン「いいところだろ?いつかシャルロットに見せたいと思ってた」
シャルロット「ケヴィンしゃん!2人でお花のかんむりつくるでち!」
ケヴィン「花の冠?」

ケヴィンは性格も不器用だが、手先も不器用である。幼い頃より獣人王に冷徹な殺人マシーンとして鍛え上げられてきたケヴィンは花など愛でたことはない。もちろん花の冠など作ったことはないのである。たどたどしい手つきで花を編んでいく。

シャルロット「ケヴィンしゃん、へたくそでちねえ。ほら、ここはこうするんでち!」
ケヴィン「アウ…」

シャルロットの方は慣れた手つきで花の冠を作っていく。

シャルロット「できたでち!さ、ケヴィンしゃん、シャルロットの頭の上にかんむり乗せるでち!」
ケヴィン「え?オイラが?」
シャルロット「こういうのは男の人にやってもらうのがいいんでち!」
ケヴィン「う…わかった」

ケヴィンはシャルロットの頭の上に花の冠をそっと載せた。キャッキャッとはしゃぐシャルロット。しばらくそうしていたが、ふとシャルロットはケヴィンのそばに座り、寄り添ってきた。

ケヴィン「シャルロット…?」
シャルロット「ケヴィンしゃん…しばらくこうちてもいいでちか?」

ケヴィンの逞しい胸に顔を寄せるシャルロット。ケヴィンはそこでホークアイや獣人達のアドバイスを思い出した。緊張した面持ちでそっとシャルロットの肩を抱き寄せる。そこにはケヴィンとシャルロット2人しか存在していなかった。周囲には野に咲く花々がそこかしこに咲き乱れ、芳香を放っている。蝶が舞い、そよ風が身体をくすぐる。邪魔する者はいない、2人だけの空間。彼らは長い間抱き合い、寄り添ったままだった。穏やかな陽光が照らす中、先に沈黙を破ったのはシャルロットの方だった。

シャルロット「ケヴィンしゃん…」
ケヴィン「…ん?」
シャルロット「こうしてると、シャルロット、とても幸せでち」
ケヴィン「うん…オイラも…幸せ…」
シャルロット「ずっとこうしていたいでち。ずっとずっと、時間が止まってしまえばいいでち。ずっとずっと、ケヴィンしゃんと一緒に…」

そこまで言うと、シャルロットはふいに立ち上がった。

シャルロット「もう日が暮れちゃうでち。そろそろ帰らなきゃ」
ケヴィン「うん、そうだな」
シャルロット「今日はとっても楽しかったでち。ケヴィンしゃんにしてはうまくエスコートできてたでちよ〜」
ケヴィン「そ、そうか!!よかった」
シャルロット「このお花畑、これからも一緒に来るでち!」
ケヴィン「ああ!」
シャルロット「ケヴィンしゃん…」
ケヴィン「ん?」
シャルロット「…………………………」
ケヴィン「どうした?」

シャルロット(今のシャルロットはケヴィンしゃんが1番でち。今まで1番はヒースだったのに、いつの間にかケヴィンしゃんが1番になってしまったでち)

ケヴィン「シャルロット?」
シャルロット「これからは『ケヴィン』って呼び捨てにしてもいいでちか?」
ケヴィン「ああ、いいよ」
シャルロット「わかったでち。これからは1段階親しい仲にランクアップでち。それじゃあ、シャルロット、帰るでち」
ケヴィン「あ、待った!光の神殿まで送って行くよ。その…最後までエスコートしなきゃ」



ヒース「お帰り、シャルロット」
シャルロット「ただいま、ヒース」
ケヴィン「じゃあシャルロット、またな!」
シャルロット「あ、待つでち、今日1日エスコートしてくれたお礼のチュ!でち」
ケヴィン「!!!!!?????」
ヒース「!!!!!」

シャルロットはケヴィンの頬に軽く口づけをすると、満面の笑顔で手を振った。

シャルロット「またね〜ケヴィン〜」
ケヴィン「あ、あう…」

ケヴィンは真っ赤になりながら帰っていった。初々しい2人の初デート。それをヒースは険しい表情で見ていたのだった。





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