シャルロット「どうちて!どうちてケヴィンと会っちゃダメでちか!!!!!」

ここは聖都ウェンデルの光の神殿。シャルロットの大声が神殿内に鳴り響いた。光の司祭は厳粛な顔をしており、傍らにはヒースがいる。光の司祭にいくら説き伏せられてもシャルロットには納得いかなかった。

光の司祭「よいか。元々人間とエルフの恋は禁じられておる。それだというのに人間と獣人とのハーフと恋に落ちるなど猶更あってはならないことじゃ。人間とエルフの恋は互いの寿命を縮める。しかし他の種族のハーフ同士が恋なぞしたらさらにどんな災いが降りかかるかわかったものではない。全く予測できないのじゃよ」
シャルロット「そんなの…そんなの関係ないでち!!!!!」
光の司祭「これは獣人王殿も納得済みじゃ。よいか、これからはケヴィン殿とは会ってはならんぞ」
シャルロット「おじいちゃんのバカっ!!!!!」

駆け出すシャルロット。神殿の外まで一気に駆け抜け、人気のない場所で息をつく。今は1人になりたかった。

シャルロット(でも落ち着いてみると恋に障害はつきものでち。シャルロットとケヴィンにも恋物語みたいな障害が出てきたのでち。でもそんなものに負けましぇん!またバネクジャコで抜け出すでち!)

しかしそれ以降、シャルロットには常にヒースが監視役としてつくようになった。近頃のヒースはいつも気遣わしげな表情でシャルロットを見守る。そして神殿を抜け出したいというときっぱりと反対するのである。穏やかなヒースらしからぬその厳しい表情にシャルロットは黙り込んでしまう。シャルロットの心は様々な思いでゆらめく。かつて想いを寄せていたヒース。彼がシャルロットとケヴィンの仲を邪魔すると思うと、なんだかヒースが焼きもちを妬いているのではと思えてくる。自惚れだがシャルロットは自分の可愛らしさには自信があった。しかしヒースの目に嫉妬の感情は見えない。感じられるのはひたすら心配されていることである。

思うようにいかぬもどかしい日々が続いていたが、ある日、かつての仲間達から久しぶりに全員で会おうと招待状が来た。なんと今回は船上でパーティーを開こうというのである。外交絡みのことで他の者達から邪魔が入らないよう、船の上でという提案である。ケヴィンと2人きりではないということで光の司祭も大っぴらに反対するわけにはいかなかったが、しかし懸念はしていた。ヒースを護衛につけようと思ったのだがシャルロットは猛反対した。

シャルロット「シャルロットはかつて世界に平和を取り戻したゆうしゃの1人でち!もし何かに襲われてもはりせんちょっぷでやっつけまち!」

そういってフレイルを振りまわした後、バネクジャコを使ってジャドまでひとっ飛びしてしまった。止める間もない。ジャドの港から船に乗る。そしてかつての仲間達の元へと向かった。

ケヴィン「シャルロットーーーーー!!!!!」
シャルロット「ケヴィーーーーン!!!!!」

2人は互いを見るなり急いで駆け寄った。そしてひしと抱き合う。その様子を仲間達がどう思ったかは本人達は知る由もない。船上のパーティーはつつがなく行われた。2人は基本的にはくっついたままだったが、女同士で話題に花を咲かせるようになると、ケヴィンは席を外した。そこへホークアイがやってくる。

ホークアイ「よう!シャルロットとのデートはうまくいったかい?」
ケヴィン「わわっ!?何で相手がシャルロットだってわかったんだ?」
ホークアイ「そりゃあおまえら2人の様子見てりゃ一目瞭然だよ」
ケヴィン「デートはとても楽しかった。シャルロットも楽しかったって言ってくれた。だけど…獣人王と光の司祭様が反対するんだ」
ホークアイ「へえ、何で?初々しいカップルだと思うんだけどなあ」
ケヴィン「オイラ、獣人と人間のハーフ。シャルロットは人間とエルフのハーフ。ハーフ同士仲良くなるの、よくないって」
ホークアイ「ふ〜ん、なるほどね。俺はそんなの気にすることないと思うけどなあ。人間とエルフの恋だって禁じられてるって言ったって、過去にその禁を犯したのはシャルロットの両親だけじゃないだろ?歴史を遡れば他にもいると思う。もしかしたらハーフじゃなくてクオーターだっているかもしれないじゃないか」
ケヴィン「う…?クオーター?」
ホークアイ「何だ、おまえ、知らないのか?ハーフのそのまたハーフはクオーターっていうんだぜ。4分の1ってことだな」
ケヴィン「じゃあ、オイラとシャルロットが結婚したら、生まれる子供は4分の1だけ獣人の血が入ってて、エルフの血も入ってて、半分人間なんだな」
ホークアイ「まあ、そういうことになるかな。そして今まで前例のなかったことだから危惧されてるってことだ。獣人とエルフの血が混じった子供なんて予想つかないからな」

ケヴィンはしょげかえってしまった。

ケヴィン「オイラ、シャルロットのこと好き。シャルロットもオイラのこと好きだって言ってくれた。だけどオイラ達、ハーフだから一緒になっちゃダメ?」
ホークアイ「シャルロットのご両親みたいに思いきって愛に突っ走ってみるか?」

その時、空から雷鳴が轟いた。そして海が荒れ、船が大きく揺れる。急変した天気に雇っていた船の船長は慌てて港へ進路を変更する。

ケヴィン「うー…あんまり揺れると、オイラ船酔いする…」

一方シャルロットも荒れ模様の海を見て不安がっていた。

シャルロット「シャルロット、海は大好き、お船に乗るのも大好きでち。だけど………シャルロット、泳げまちぇん」

海はどんどん荒れていき、嵐になった。皆、慌てて甲板から船内へ入ろうとする。その時である。船が大きく揺れ、シャルロットは大きくバランスを崩した。そしてそのまま嵐の海の真っ只中へ――

シャルロット「キャーッ!!!!!」
ケヴィン「シャルロット!!!!!」

バシャーン!バシャーン!

海に落ちたシャルロットを見てすかさずケヴィンは後を追い、海に飛び込んだ。2つの大きな水音と共に2人は海の中へ消えた。
残された仲間達は取り乱してしまった。その場を収めたのはホークアイである。

ホークアイ「幸いここに『ぴーひゃら笛』がある。ブースカブーに2人を探してもらおう。海の主なんだからな」

ホークアイは嵐の中ブースカブーを呼ぶと、ケヴィンとシャルロットの探索を頼んだ。





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