私は,愛知県春日井市に在住です。本屋さんや図書館で本を読んでいたとき、本の著者の出身、自分の思っていることと本を書いている人の思いなどから、著者や著作に親近感をおぼえることがあります。なかなか、著者の意図することすべてを理解することはできません。でも、受けた印象などを思うまま紹介していきたいと思います。
花と木の文化史(中尾佐助 岩波新書、1986)
ヨーロッパなどの庭園と比較して日本の庭園の特徴を説いている。また、日本の代表的な園芸植物の桜、椿などの品種を説いているのは栽培植物学者ならでは視点として印象的。
思考の整理学(外山滋比古 ちくま文庫、1986)
学校は先生と教科書に引っ張られて学習する「グライダー人間」をつくるには適しているが、独力で知識を得ようとする「飛行機人間」を育てるのは難しい。また、夜、寝る前にあまり深刻に考えるより、一晩寝て、目を覚ましてみれば、落ち着くということを書いている。大切なことなのだが、あまり考えもしなかったことについて、知らせてくれる本です。
栽培植物と農耕の起源(中尾佐助 岩波新書、1966)
栽培植物の農耕文化は4つに分類される。地中海農耕文化、サバンナ農耕文化、根菜農耕文化、新大陸農耕文化の4つ。筆者は、世界をまわり、それを調べてきた。新大陸のジャガイモの種類が多くあり、そのうち1種類だけが全世界に伝播したとの記述がおもしろい。
読みの整理学(外山滋比古 ちくま文庫、2007)
本の読み方には2種類ある1つは。アルファ読み、もう1つはベータ読み。前の日にテレビで見たスポ−ツを新聞記事で読むのはアルファ読み、古典の素読はベータ読み。ベータ読みの事例として、童話「桃太郎」を例にとり、エピローグで説明している。
佐藤一斎言志4録手抄 彫板 名言録集(いわむら一斎塾 丸理印刷(瑞浪市)、2006)
佐藤一斎の著作言志4録は4編、すなわち言志録、言志後録、言志晩録、言志耋(てつ)録。人それぞれにおいて、生活、生涯にあって、心して自らを錬磨し、修養につとめるべき大切な真理、道理が説かれている。それらの中から、いわむら一斎塾が200条を選び掲載したものがこの名言集。どれも心を打つものばかりだが、162条「真の功名は、道徳便(すなわち)是(これ)なり。真の利害は、義理便(すなわち)是(これ)なり。(言志後録24条)のように列してある。これらの条文は読む人にとって珠玉の言葉になるでしょう。
ライフワークの思想(外山滋比古 ちくま文庫、2009)
ライフワークにおいて生涯の仕事を見つけることが価値のあることと唱えている。それは、自分自身の花か借り物か、値のついた花か切り花か。著者は生涯の自由時間にライフワークの花を咲かせるために使われるべきだと言う。第3章ではパブリックスクールについて、映画「チップス先生さようなら」を例示しながら説明している。最後「ことばと心」言葉によるふれあい、ほめることの大切さについて説明している。
アイデアのレッスン(外山滋比古 ちくま文庫、2010)
たんなる思いつきを仕事や勉強、きらりと光る会話に影響を与えるアイデアのつくり方を作者は「アイデアの基本」、「アイデアのルール」、「アイデアのつくり方」に分け、実践的に説明している名著。
最強の人生指南書(齋藤 孝 祥伝社、2010)
佐藤一齋「言志四録」の中から著者がセレクトしその言葉から著者の思いを綴ったもの。「言志四録」が古今に渡って読み継がれている人生の知恵ということを再認識させられた。
怒らないこと(アルボムッレ・スマナサーラ サンガ新書、2006)
スリランカ初期仏教の長老が、人類史上賢明な人たちが怒りを全面否定したことについて、なぜそうなのか分かりやすく書いた著作。この本を読むと怒りについて、これからどう向き合っていけばよいか考えるうえで、視野を広げさせてくれる。
少年記(外山滋比古 中公文庫、2011)
筆者の少年時代、友だちと遊んだときのこと、お祭りの時にレントゲンのおもちゃを買ったときの思い出、学校にやってきた偉い人のお話など、筆者の多感な少年時代に感心することしきりだった。旧制中学の頃、「坊ちゃん」先生と出会いの部分はそのようなことがあるのかと感心した。「まんじゅうの涙」で、焼き芋事件を起こした筆者と森先生とのやりとり、恩師とはどんな先生か考えさせる文章に思える。