2003年3月15日、岐阜県多治見市にある虎渓山永保寺で、同県重要文化財などの
開帳があり、行ってきました。正和2(1313)年、夢窓国師の開創といわれる古刹で、観音堂、開山堂が国宝に
指定されています。
朝から曇り空で、午前11時ごろ現地に到着したころは、雨がぱらつくあいにくの天気でしたが、
大勢の老若男女が詰めかけていました。通常、こうした開帳には年配者が多いのですが、20代の若者も
目立ちました。文化財に関心を持つ若者が増えてきたようです。
文化財の写真撮影もフリー。あちこちでフラッシュが光りますが、注意は一切ありませんでした。
文化財関係は撮影禁止が多い中で、こうした姿勢は好感が持てます。一部の人が独占して、
みんなに開放しなければ文化は育たないと思います。
永保寺は、京都の南禅寺派の道場。3月15日現在で10人ほどが修行しているそうです。夢想国師が法弟の
仏徳禅師ら7、8人と遠江国から行雲流水の道すがら、長瀬山の景観が気に入り、草庵を建てたのが始まりと
いいます。
国師は約3年滞在し、その間の正和3年に観音堂を建てるなど境内を整え、再び行脚に出た後は、
仏徳禅師が引き継ぎました。このため、夢想国師を開創、仏徳禅師を開山とし、文和元(1352)年に
建てられた開山堂に2人の像が祭られています。
光明天皇(1338−1349年)の時に、勅願所となりました。室町時代には、山内に30余坊を数えたと
いいますが、その後、何度も兵火に遭い、大部分が失われ、観音堂、開山堂、庭園だけが昔の姿をとどめて
います。
この日は、方丈に岐阜県重要文化財の涅槃図が掲げられました。絹本着色の涅槃図は縦180センチ、
横150センチで、貞冶3(1364)年の記銘があります。永保寺では毎年、3月15日に掲げて
一般に公開、釈迦を追慕しています。
涅槃図について、入寂した釈迦は黄金色で描かれ、右側に並ぶ沙羅双樹は枯れている。涅槃図には
52種類の生物が描かれているが、ツバメと猫は描かれていない。東福寺の涅槃図には猫が描かれている、
という住職による説明がありました。
観音堂では岐阜県重要文化財の本尊・聖観世音菩薩坐像が開帳されていました。穏やかな表情の美しい像でした。
土岐川の流木を漆喰で固めた祠の中に納まっています。祠は年月を経たため漆喰がはがれ、
釘で打ちつけて壊れるのを防いでいるとのことでした。
観音堂は鎌倉末期の唐様建築の優れた遺作であるとともに、平安朝からの和洋建築の手法も取り入れられて
いることから、昭和27年に国宝に指定されました。
開山堂では、夢想国師の像、開山・仏徳禅師の像、十六羅漢像が開帳されました。開山堂は室町期の代表的な
建築物として、観音堂と同じ昭和27年に国宝に指定されました。【写真は開帳された岐阜県重要文化財の
涅槃図】(2003年3月17日作成)