World > Latin America > Caribe > Cuba

Artist

VARIOUS ARTISTS

Title

・LA VIDA ES UN SUENO

from

BOLEROS EN MI CORAZON



Japanese Title わが心のボレーロ
Date 1940s-1960s
Label オーディブックAB114(JP)
CD Release 1993
Rating ★★★★☆
Availability


Review

 1980年代の終わりに、中村とうよう氏が設立したオーディブックは、CDと本を一体化したユニークな試みで、世界のポピュラー・ミュージックの貴重な音源をくわしい解説とともに楽しめとても重宝したが、90年代半ばを過ぎたころ、著作権法の改訂にともない残念ながら市場から姿を消した。なかでも『大衆音楽の真実』全3巻は、世界のポピュラー音楽の流れを実際に耳で確認できる全ポピュラー・ミュージック・ファン必須のアイテムであった。

 本盤は、教材的な意図よりも、単純に楽しむことを目的に氏が選曲した珠玉のボレーロ集である。ベニー・モレーオマーラ・ポルトゥオンドら、多くの名歌手がとりあげている、アルセニオの代表作に数えられるこのボレーロの名曲は、48年に、アルセニオが自己のコンフントでも演奏している(TUMBAO TCD-031Pヴァイン PCD-1402などに収録)。その演奏もすばらしいが、おそらく本盤以外には未復刻のこの再演は、アルセニオ楽団をバックにめずらしくロサリア・モンタルボという女性歌手が歌っている。同曲の数多い名演のなかでも個人的には、これがベスト・オブ・ベスト。ロサリアの飾り気のないがソウルにあふれた歌声から、この曲をつくったときのアルセニオの心情が切々と伝わってきて感傷なしには聴くことができない。

 解説にSMC原盤によったとあるから、確証はないが、50年代前半に出た(とされる)"CUMBANCHANDO CON ARSENIO (FIESTA EN HARLEM)" からの音源ではないだろうか。TUMBAO TCD-022の音源の一部はここからのものかもしれん。そうだとすると、53年録音ということになる。

 ところで、この名曲の成立には、つぎのような背景があった。
 47年2月、アルセニオは盲いた両眼の治療のために、わずかな可能性を求めて、名医の評判が高かったラモン・カストロヴィージョの診察を受けるべく、はじめてニューヨークの土を踏んだ。そこでドクターが下した診断は、かれにはあまりにツライものであった。それから数時間後、うたたねから醒めると、弟のラウル(愛称“カエサル”)を呼んで歌詞を書きとらせ、できあがったのがこの曲。
 わたしはスペイン語がまったくダメだから、『わが心のボレーロ』から歌詞の大意をのせておこう。しかし、この織田信長みたいな邦題だけはやめてほしい。(たぶん中村とうよう氏訳)

   人生は夢まぼろし

   一度騙されたら、もう二度とコリゴリでしょ。
   人生の筋書きが見えたら、もう泣くことはないわ。
   悟らなきゃだめよ、世の中万事ウソ八百、ホントのことなど何もない。
   幸福の瞬間を生きなくちゃ。
   どうしてそこまで言い切れるかって?
   人生は夢まぼろし、そういうもんだからよ。
   人間、生まれて死んでいく。
   どんどん年寄りになるのが現実。
   なぜかって?
   すべては永遠の責め苦、この世は幸福ヌキで作られてるのだから。
   (なぜ泣く?)



(9.9.01)



back_ibdex

前の画面に戻る

by Tatsushi Tsukahara