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Artist

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Title

DISCOTHEQUE 75


discoteque75
Japanese Title

ディスコテーク75

Date 1975
Label SYLLART/MELODIE 38212-2 (FR) / メタカンパニー XM-0280(JP)
CD Release 2000
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 シリーズではもっともなぞの多いアルバム。5組全6曲構成だが、どの曲がどのバンドの演奏なのかさえ、はっきりしない。だから、以下の曲での演奏者はあくまで推測である。

 シリ・オーセンティークはグループ名から想像するにシリフォン・オールスターズか。スター・プレイヤーのソロがはなばなしく展開されるゴージャズな演奏と思いきや、意外にもチャチャチャをベースにした温厚でこじんまりしたギニアン・ルンバ。女性とも少年ともとれるリード・ヴォーカルとキューバン調のフルートを除いてはこれといった特徴がない平凡な演奏。これが“真のシリフォン・サウンド”というならあまりにスケールが小さい。

 クレジットの順からいっておそらくジョリ・バンドによる'SAKONKE' は、初期のパームワイン・ミュージックを思わせるつっこみ気味のぎくしゃくしたノリと、がなるようなオヤジ系ヴォイスが特徴。洗練を拒否し泥くさい方向へむかっているのは、いわゆる「逆文化変容」ってやつ?わたしはこの手のポリリズムに弱い。最高です。コルトレーンに似たトーンのソプラノ・サックスがおもしろい。

 'DABA' はモコモコしたオーセンティックなグリオ調サウンド。前半は悠々とした展開で、後半に曲調が変わり一気にテンポアップ。マリのバンバラのバンド、シュペール・ビトンのようだ。新味はないがアーシーなヴォーカルを中心によくまとまった力づよい演奏。シュペール・ボワロ・バンドのような気がするが、もしかしたら別のバンドなのかもしれない。

 ファンク路線をとりいれた 'KWA MU LAN MA' に、わたしはなぜかマカロニ・ウェスタンを想像してしまった。男くさいエレキ・ギター、勇ましいトランペット、ジャジーなハモンド・オルガンとファンク調のギター・リフ、印象的なメロディ、臆面もなくかっこいいムード。モリコーネの流れを汲む正統派とはいかないが、解放奴隷からバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)になった男のストーリーでマカロニを撮るならテーマ曲にぴったりだ。自信はないがこれもシュペール・ボワロか。

 'KULUMBA' は、まちがいなくカマイェンヌ・ソファ。ホーンズを廃しソリッドなロック路線をひた走るかれらであるが、ここではオキナワン・テイストがまじったノンキなラテン・サウンドを展開。キーが狂ってんだか、いわゆる多調音楽というやつなんだか、音がミョーにズレていてこれがむちゃくちゃ心地いい。ひとりヴォーカルだけがグリオ系ののびやかで力づよい熱唱を聴かせる。それでもサリフ・ケイタみたいに息苦しくならないのはリラックスしまくりのバックのおかげ。

 ラストをかざる 'ARTISTES'ホロヤ・バンドにまちがいなかろう。まず、ぶ厚く迫力満点のホーン・セクションに圧倒される。アフリカのホーン・アンサンブルには強弱をつけるという発想があまりない。そのためウネリはないが、音のかたまりが打ち上げ花火のように末広がりに飛散する。ホロヤ・バンドはまさにその典型。男くさく力づよいヴォーカルとトランペットが光る。

 みてきたように、本盤はサウンドの新しさという面では前作におよばないものの、冒頭のシリ・オーセンティークを除けば、伝統音楽の要素をたくみにとりいれたレベルの高い演奏内容といえよう。ただ、カマイェンヌ・ソファにしろ、ホロヤ・バンドにしろ、実力とは別に、ベンベヤ・ジャズのような「華」が感じられないのはいかんともしがたい。


(6.3.03)



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by Tatsushi Tsukahara