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Artist

AFRICANDO

Title

VOL.1 - TROVADOR


trovador
Japanese Title 〜VOL.1 / TROVADOR
Date 1992
Label STERN'S AFRICA STCD 1045(UK) / ヴァケイションVALI401(JP)
CD Release 1993/1994
Rating ★★★☆
Availability ◆◆◆◆


Review

 イブラヒマ・シラIBRAHIMA SYLLAは、サリフ・ケイタ、フランコ、イスマエル・ローなど、アフリカのミュージシャンの作品を数多く手がけてきたセネガル出身の名プロデューサー。SYLLARTは、パリに拠点を置くかれのレーベル。そのSYLLARTより、最近、いまはなきギニア国営のレーベルSYLIPHONEの貴重な音源がつぎつぎと復刻されている。
 SYLIPHONEは、セク・トゥーレ大統領の伝統文化保護政策にのって、アフリカ独自のポピュラー・ミュージックの創造に大きな貢献をした。実際、シラのプロデューサーとしてのデビューは、このレーベルから60年にリリースされたケレチギ・トラオレのアルバムだったと聞いたことがある。
 また、シラは6,000枚にも及ぶラテン音楽コレクターとしても知られる。周知のように、アフリカにおけるポピュラー・ミュージックの成立に、ラテン系音楽(なかでもキューバ音楽)が及ぼした影響力ははかりしれない。

 一方でアフリカらしさを追求しつつ、他方でラテン系音楽にも深い造詣をしめすシラのアイディアから生まれたプロジェクトがこのアフリカンド。アフリカンド・プロジェクトの要諦はこうだ。「アフリカで独自の進化を遂げたアフロ・キューバン(というよりキューバン・アフロというべきか)が、ニューヨークで本場のアフロ・キューバンと出会ったとき、どんな音楽が生まれるか」ということである。

 メイン・ヴォーカリストには、セネガルの名門オルケストル・バオバブからメドゥーヌ・ディアロ、オルケストル・ナンバー・ワンからパプ・セック、それに若手のニコラス・メンハイムの3人が起用された。そしてバックをつとめるのは、すべてニューヨーク在住のベテランのサルサ・ミュージシャン。
 サルサといっても、最近のコマーシャルでナンパなサルサではなく、キューバやプエルト・リコ直系のオーセンティックなラテン音楽である。いわゆるダンサブルなサルサばかりでなく、キューバ音楽独特のトレス(複弦の小型ギター)を使ったストイックなソン・モントゥーノや、フルートとヴァイオリンをフィーチャーしたキューバ伝統のチャランガ・スタイルによる演奏があったりして、シラのキューバ音楽への深い愛着とこだわりが感じられる。
 バックがコアなラテンだからって、3人のヴォーカル・スタイルはいたってアフリカ的。なかでも、ウォルフ独特の鼻にかかったようなつややかなディアロのハイ・トーン・ヴォイスと、男っぽくアーシーなセックのしゃがれ声がいい。

 プロデューサーのシラにとっても、ニューヨークでのはじめての仕事となった92年11月のこのセッションは、本盤とその第2弾"TIERRA TRADICIONAL"(STERN'S AFRICA STCD 1054(UK))としてリリースされ、アビジャンでおこなわれた1993年度最優秀音楽賞を獲得した。だが、これがパプ・セックのラスト・レコーディングになってしまった。

 アフリカンドは、その後も残されたディアロとメンハイムを中心に、毎回、コンゴのタブ・レイ・ロシュロー、ギニアのセクバ・バンビーノ(元ベンベヤ・ジャズ・ナショナル)や、ハイチのロジャー・ユジェーン(タブー・コンボ)などビッグなゲストを迎えて高水準のアルバムをつくりつづけている。

 そして、2000年にリリースされたばかりの通算6枚目となる"MANDALI"(STERN'S AFRICA STCD 1092(UK))は、メンハイムが抜けた代わりに、マリのサリフ・ケイタ、セネガルのチョーン・セック、コンゴのコフィ・オロミデ、それにセクバ・バンビーノ、ロジャー・ユジェーンといった大物から、コンゴ出身でアフリカのアコースティック・ポップの注目株ロクア・カンザまで、これまでにない豪華なゲストをヴォーカリストに迎えたアフリカンド・オールスターズ名義のアルバム。
 で、肝心の中味は?というと、むかし、東映や大映が正月やお盆の公開に合わせて製作していたオールスター時代劇のようなものといえば、おわかりいただけるだろう。

 アフリカンドにかんしては、「はじめにプロジェクトありき」だから仕方がないのかもしれないが、こうまで真っ当にサルサせずとも実力のほどはたしかなのだから、アフリカならではの、もっとストレートなラテン系音楽に取り組んでもらいたいところだ。


(5.15.02)



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by Tatsushi Tsukahara

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