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Artist

ORCHESTRE NUMBER ONE

Title

NO1 DE NO1


no1 de no1
Japanese Title 国内未発売
Date 1978-1980?
Label DAKAR SOUND CNR 2002969(NL)
CD Release 1996
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 便宜上“オルケストル・ナンバー・ワン”としたが、正式なグループ名ははっきりしないので、以後略称の“ナンバー・ワン”と表記する。単独CDとしては、オランダのダカール・サウンドから本盤とその続編"NO2 DE NO1"(DAKAR SOUND CNR 2004803, 2000)の2枚が発売されている。

 グループの結成は、"DE NO1"のライナーでは1972年とあるが、"DE NO2"では1976年となっている。まったくの想像だが、セネガルの名門バンド、スタール・バンド・ドゥ・ダカールのメンバーだったパプ・セックが、マケーテ・ンジャイェらをさそってスター・バンド・ナンバー・ワンを結成したのが72年。ダカールにあったかれらのホーム・グラウンド、マイアミ・ナイトクラブのオーナーとケンカ別れしたのち、オルケストル・ナンバー・ワンとして再スタートしたのが76年だったということだろうか。

 わたしがナンバー・ワンをはじめて意識したのは、セネガルのラテン志向の音楽を集めたコンピレーション"LATIN THING"(DAKAR SOUND DKS003, 1994)の2曲を聴いたときだった。キューバの超有名スタンダード「グァンタナメーラ」と、どっかで聴いたことのあるようなデスカルガっぽい曲は、スペイン語には聞こえない奇妙なスペイン語と、キューバにはない独特のリズム感とがあいまって、なんともいえない不思議な魅力を醸し出していた。しかし、そのときは、まさかこれが70年代のセネガル音楽シーンを代表する名門バンドの演奏だとは夢にも思っていなかった。

 ユッスー・ンドゥールに代表されるアフリカ色の濃いンバラ・ポップが台頭する以前、セネガルのポピュラー・ミュージックはパリ経由で流入してきたキューバ音楽を模倣したラテン系サウンドが主流をしめていた。スタール・バンド・ドゥ・ダカールがその典型だが、その分流であるナンバー・ワンやオルケストル・バオバブも初期はかなりラテン色の濃い演奏を残している。両バンドとも時代を経るにしたがって、しだいにアフリカっぽいサウンドへと変貌していったが、ナンバー・ワンのほうがバオバブよりラテン色をつよくとどめている。

 ナンバー・ワンは、パプ・セックとンジャイェを含めて5人のヴォーカリストを擁していたが、78年から80年ごろの録音を集めた"DE NO2"では、マール・セックとドゥドゥ・ソウの2人の若きヴォーカリストに焦点を当てたつくりになっている。そのせいか、ンバラ志向のつよい歌と演奏が並ぶ。
 エフェクト・ペダルをふんだんに駆使したヤクヤ・ファルの流麗にしてスペイシーなギター・ソロが思う存分堪能できる。ママネ・ファルのワイルドなタマ(トーキング・ドラム)も聴きどころのひとつだろう。ンバラっぽいとはいいながら、ユッスーのような洗練されたスマートさはなく、たとえばホーン・セクションの入れ方は、合いの手のようで、関西弁でいうところのイナタさが感じられ、一瞬スーダンのアリ・ハッサン・クバーンの音楽を想像させたりもする。

 "DE NO2"は、すばらしく密度の濃いアルバムではあるが、個人的な好みでいえば、ラテン色とぶっとい男っぽさが前面に押し出された"DE NO1"を推したい。78年前後とおそらくそれ以前の未発表音源をコンパイルしたと思われる本盤は、パプ・セックとンジャイェという個性的なヴォーカリストに焦点を当てている。なによりもパプ・セックのしゃがれたアーシーなヴォーカルが強烈。そのワイルドにして濃厚なサウンドは、きわめてキューバ的。もっというなら、アルセニオ・ロドリゲスチャポティーン〜ミゲリート・クニーのソン・モントゥーノ、グァグァンコーにつうじるドス黒いフレイヴァー。
 かたや、ンジャイェはアフリカ的なハイ・トーンと節まわしがどこまでも少年っぽく、パプ・セックの浪花節系ヴォイスとコントラストを描きながら、衆道的なムードを醸し出している。

 曲の後半部にテンポ・アップして、ヴォーカルとトランペット(またはコーラス)とがコール・アンド・レスポンスを繰り返す、いわゆるモントゥーノもしっかりやっていて、キューバ音楽ファンにはたまらない。ヤクヤ・ファルのギターも"DE NO2"ほどの過激さはないが、本場キューバのトレス・プレイヤーも真っ青のすばらしいプレイを披露。とくに4曲目の'GUAJIRA VEN'(どこがグァヒーラかよくわからんが)でのファズを効かせたギター・プレイは出色。アリ・ペンダ・ンジョイェのブリリアントなトランペット・プレイにたいしては、アフリカのフェリックス・チャポティーンの称号を与えよう。

 92年にパプ・セックが元バオバブのメドゥーン・ディアロらと結成したアフリカンドのファースト・アルバムでもリメイクされた'MACAKKI'、パプ・セックのお気に入りだったという晩期ビートルズのような(と感じているのはわたしだけかもしれないが)'WALO'をはじめ、全曲申し分ないが、個人的にとくに好きなのは5曲目の'YAYA BOYE'。ヴォーカル、ギター、パーカッション、すべてがファンキーでカッコよくて吐きそうになる。スゴイ。凄すぎる。アルセニオが生きていたらぜったいに好きになるだろう。キューバ音楽ファンなら聴かなければ損する名盤中の名盤だ。キャプテン・ビーフハートのファンも是非!


(2.27.02)



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by Tatsushi Tsukahara