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Artist

CHIEF COMMANDER EBENEZER OBEY

Title

EVERGREEN SONGS 6


obey6
Japanese Title 国内未発売
Date 1972
Label OBEY CDEDEM 201-006 (Nigeria)
CD Release 1996
Rating ★★★★
Availability ◆◆


Review

 キング・サニー・アデの好敵手とされるエベネザ・オベイは、自身のレーベルOBEYから〈EVERGREEN SONGS〉と題したぼう大な数(知ってる限りで15枚!)のCDをリリースしている。どれも録音年の記載はいっさいないため、遠藤斗志也さんのホームページにあったディスコグラフィをもとに推察するに、ナイジェリア・デッカ(現在のAFRODISIAの前身)に残した60年代後半のシングルと70年代のLPが音源になっているようだ。シリーズは、かならずしも発売順に収録したものといえず、録音年がバラバラだったり1枚のLPが複数のCDにわかれて収録されていることのほうがふつうで、ややこしいったらありゃしない。
 
 63年ごろに自分のバンドを結成したオベイは、68年に'OLOMI GBO TEMI'"EVERGREEN SONGS 1" 収録)をヒットさせたころから、驚異的なペースでシングルをリリースしつづける。69年には“チーフ・コマンダー”(最高司令官)を名のるようになり、70年ごろからはLP主体のリリースに切り換えている。このことによってLPの片面まるごと使って曲の切れ目なくメドレー形式で録音するのが通例となっていく。LP時代に突入しても、リリースのペースはいっこうに衰えることなく、平均年4、5枚は出しているはずだ。
 バンド名を“インターナショナル・ブラザーズ・バンド”から“インター・リフォーマーズ・バンド”に変えたのは、人気絶頂の73年のことである。バンド名から推察するに、この時期、大幅なメンバー刷新がおこなわれたのであろう。「最高司令官」の独裁体制がますます強化されたってことなのか?
 
 オベイがワールド・デビューを飾ったのは、サニー・アデに遅れること1年後の83年、英国ヴァージンからリリースされた"JE KA JO"であった。このあと、ヴァージンからもう1枚、英国スターンズから1枚アルバムをリリースしたものの、アデが欧米のみならず日本でも大きな話題をふりまいたのとは対照的にあまり売れなかった。
 じつはこれら3枚については、わたし自身まったく知らなかった。わたしが知っているのは、85年の"JUJU JUBILEE"(SHANACHIE 43031(US))、89年の"GET YER JUJUS OUT"(RYKODISC RCD 20111(US))、それに最近リリースされた"JUJU JUBILATION"(HEMISPERE 23504(UK))の3枚である。そのうち前2枚は持っていたので、この稿を書くにあたって、ひさしぶりに聴いてみた。
 
 "JUJU JUBILEE"は、84年前後に発売された数枚のオリジナルLPからの抜粋。もともとLPでリリースされたものを復刻したものだから、全8曲トータル40分に満たない内容はいかにもさびしい。最悪なのは、オリジナルでは20分近かったはずのメドレーからハイライト部分だけを抜粋していること。このため、全曲が尻切れトンボでフラストレーションがたまってしまう。欧米では長尺物はむずかしいとの判断があったとは思うが、これではオベイの音楽を適正に評価することができない。
 "GET YER JUJUS OUT"は、87年に合衆国でおこなわれたライヴ録音。デジタル録音のため、音がとてもクリア。海外を意識したのか、いつも以上にパーカッションが強調されている。トータル68分を全曲切れ目なしに収録されているのはいいとしても、パーカッションが時おり、日本の安っぽい和太鼓曲打ちのように聞こえてしまって最後まで聴きとおすにはキツイものがある。
 
 この第6集は、シリーズにはめずらしく3曲(むしろ3単位というべきか)すべてがインターナショナル・ブラザーズ時代の72年発売のLPから採られていて、しかも'EDUMARE SORO MI DAYO''BOARD MEMBERS'の各メドレーは同一LPのAB面にあたる。そして、このLPこそ80年代までつづく(本シリーズまで含めると21世紀に至ってもつづいている)オベイ怒濤のアルバム・リリースのさきがけをなすものである。
 
 80年代の"JUJU JUBILEE"のクレジットをみると、ギター3、スティール・ギター1、ベース2、トーキング・ドラム2、コンガ1、ドラムス1、マラカス1、コーラス5、その他からなる総勢20名近い大所帯である。ところが、本盤では、ギター2、ベース1、トーキング・ドラム1、コンガ1、マラカス1、それにオベイのヴォーカルとコーラス数名を加えたせいぜい10名前後の編成に聞こえる。ジュジュの特徴ともいえるハワイアン調のスティール・ギターは入っていない。その代わり、ファズを効かせたリード・ギターが、サイケなムードを醸し出しながら縦横無尽に活躍。ロック、ファンク、それにルンバ・コンゴレーズからの影響が感じられる。「南京豆売り」など、なじみのある曲のフレーズがときどき顔を覗かせたりして、思わずほくそ笑んでしまう。
 また、後年のジュジュでは即興的なメロディを弾くリード・ギターと、反復パターンやパーカッシブなコード・パターンをくり返すリズム・ギターとのあいだにかなり明確な役割分担ができているが、ここでは両者の自由度はもっと高く会話的である。
 トーキング・ドラムをはじめとするパーカッションもこれ見よがしの部分がなく、リズムがギターのメロディ・ラインとほどよく混じり合って重層的な効果を生んでいる。
 
 ところで、ジュジュにはナイジェリア西部に住むヨルバの、しかもキリスト教徒のミュージシャンが多く、オベイはなかでも熱心なキリスト教信者である。歌詞の内容にも宗教的なものが少なくないようで、かれの音楽のなかで歌詞がかなり重要な位置をしめているとみていいようだ。オベイのヴォーカルはファンキーというよりもルンバ・コンゴレーズに近いやさしくソフトなタッチだけれども、これに呼応するコーラスとのコール・アンド・レスポンスにはゴスペル的要素がつよく感じられる。

 コンゴのフランコもそうだが、同時期のアルバムなら正直いって、わたしら外国人の耳にはどれも似たような感じに聞こえてしまい、そう何枚も持っていてもしょうがないような気がする。けれども、音楽をつうじてメッセージを託することに重きを置いていると考えれば、こうしたワン・パターンにも納得はいく。だからといってダンスを捨てたわけではないところに、わたしはジュジュと河内音頭との共通点を見てしまうのだ。


(4.1.03)



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by Tatsushi Tsukahara