Mini Watter体験

20135025〜20130927


目次

まずは基本の5687版
難儀したNEC・6R-H2版
難儀した原因追求
出力トランスの挙動の謎 20130927終了
20131219追記
「Mini Watter」ぢゃ無くなるECL-83版の妄想 20131214〜未着手


はじめに

多くのファンがいらっしゃる、ぺるけさんご提唱の「Mini Watter」を体験したく、拵えてみました。正調?5687版は、ご著書(製作中に購入、先に読むべきでした。)とHPの充実した情報で確実に完成できました。まあ、自身のチョンボは・・・伏せます。

こちらがぺるけさんの「Mini Watters Project」です。

前作がえらく難儀したので、次は楽したいな〜・・・ちゅう思惑はありました。ウェブサイトの印象で“これなら”と感じたのですが、ラクしようなどと考えたり、イロケ出そうとしたのは甘かったと痛感しました。


まずは基本の5687版

5687版Miniwatter 「正調」を名乗るにはいささか変更箇所が多いかも。基本回路は忠実に・・・では無いが、ほとんどそのまんまです。

意匠は結構「好き」にさせていただきましたが、LEAD・P-12(W250xH60xD150mm)シャーシなので、投影面積は頒布されている標準シャーシと同一かと存じます。

5687版TOP 5687にすれば、いささか息苦しい場所かな。

地味なプリントのNEC球です

5687版BACK 構造上で一番悩んだのがPT(東栄P-185B)の配置。ACインレットの位置がソレを物語る。

目隠しの下 PT切り抜き寸法の下書きミスで、みっとも無い覗き方してます。目隠しのトップパネルは必須。

5687版ナカミ PTの奥に電源基板。FET銘柄やCR数値はオリジナルとは異なる。

入力VoLは安いのにしたが、サイズ的にもRK-27は無理。妙な拘りだが「捻る」電源SWを探したら、本当に売ってた。JUNK店の人曰く「ここにあるだけ」だそうで。

PTの変更により、整流電圧≒250〜254V、リプルフィルタ出口≒230〜234Vと若干低め。Ip≒16mA。Pomax≒0.5〜0.6W。歪み率特性は、関連してぺるけさんのオリジナル公称特性曲線を、少しだけ左に(0.1W時2%近い)寄せた感じでした。

他の特性は、ほぼ公称発表値が再現され、練られた回路は違うのお・・・と。部品配置の違いが出やすい残留ノイズは、L/Rで0.13/0.17mV。タマを左右入れ替えてもL<R傾向は変わりません。J級抵抗を無選別で使用したためだろうと推測しますが、左右利得差が1db近く現れました。手抜きと思われても仕方ありませんが、タマの左右差し替えで0.9db差にした程度の始末です。

静寂です。細かな音が明瞭です。不思議な感覚ですが、その細かな音が他の自作機より太い印象です。う〜ん旨く書けませんね。

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難儀したNEC・6R-H2版

6R-H2元箱添付資料 WE-417Aや5842の方が知られてるかと存じますが、似たモン仲間です。ヒーター電流が0.35Aと異なるのでご注意を。

ラジオ技術(1994-09)の「5842 単段シングルアンプ」を読んで、当時追試したのですが、無理に固定バイアスで挑んだのが失敗。Raytheon5842WAでしたが、個体差なのか暴走する子が何人か・・・。ヒーター電圧の過剰(6.6〜7V近く)が主因だったかも、と記憶しますが、継続する意欲が萎えてしまい頓挫した経緯があります。今回、高いカソード抵抗と、控えめなヒーター電圧(6.0〜6.2V)で出直しです。

←元箱入りで買った奴に付いてた「取説」?

6R-H2版・回路図 ぺるけさんの71A版Mini Watterの考え方をお借りして考えました。とはいえ極端にバイアスが浅いタマに代わるので、前段のカスコードは省略。出力段のカソード電圧・・・関連して電源電圧も変更です。

5687版の回路未掲載を、これをもって償おう・・・と意図しております。あからさまな手抜き?。

5687版では、PT2次:185Vタップ使用でした。負荷電流値が近似してるので、MOS周りの抵抗値はそのまんまで事足りる?のは楽です。

5687版と6R-H2版 左が、先行した5687版。右が6R-H2版のアンプ基板です。

6R-H2版基板 6R-H2版の裏側。この後苦しむ、特定条件下での「高域発振」原因を探ってる最中の写真です。左ch(写真では右側)には回路図に含まれてない、2SC1815のエミッタフォロワが追加されてます。後に除去、元回路に戻してます。

基板左右端にまたがるのは、ソケット真下からの「LED浣腸?」照明用。5687版同様に白色を「挿し」てますが、インパクトは無いなあ。

6R-H2版発振 これが難儀した相手。「6R-H2版・投稿用回路図」の定数で約7dbの負帰還ですが、0.047μFの純容量付加時の発振波形です。同0.1μF以上でも発振。

この後、一時5687版に戻し、同様の純容量負荷試験をしましたが、方形波形は崩れるものの。〜0.47μFまで発振に至りません。

6R-H2版補償後 定番の帰還抵抗への微分補償2200pFと、OPT2次のZobelネットワーク0.1μF+47Ωで押さえ込みました。

入力元波形と出力波形の位置が上下逆なのは・・・すみません、コレが最終決定版の再撮影なのです。上のとは撮影時期が異なってて、オシロCH接続を確認しなかったのです。

6RH2版F特1 LchのF特、0db=1Vrms。NFB≒6.9db

青線は高域補償無し、出力段の「ショートループ」コンデンサが100μF時のF特。ご著書でも語られてる、低域ピークが見られます。緑線は高域補償素子付き、「ショートループ」コンデンサを330μFに増量したF特。

「ショートループ」コンデンサの増量で低域ピークは押さえ込まれている・・・ように見えましたが・・・。

6RH2版F特2 上記対策でも、このとおり低レベルでは効果が充分では無いとわかりました。これ以上のC増量は断念、スペースは無いし、1000μF級をぶち込むのは度が過ぎてると思う。

なお、それ以外は5687版とさほど変わりが無い。

6RH2版Lch THD 6RH2版Rch THD 6R-H2版左右歪み率特性です。

購入時期は異なる14本の中から、約170V・20mAの動作点で、-3V内外の“バイアス深め”の2本を使用しました。半数を占める-2V未満球は・・・

6R-H2としては、ほぼ上限の動作条件かと思います。5687版より負帰還量を増やしたので、案外低歪み。最大出力は同等の0.5〜0.6Wか。
残留雑音は多く、0.25mV。Hハム主体かと思います。

はしょりますがDF値は、100Hz・1kHzは7.8、10kHzで6.7。ChセパレーションはL⇔R共60db以上(20Hz〜20kHz)。やたら高gmなのは気になるところですが、Mini Watterに出来なく・・・はないタマでした。

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難儀した原因追求

さて、6R-H2版Mini Watterは以上の内容で完成したわけですが、クドいのは承知で「特定条件下で発振」の原因追求に難儀した顛末を述べたいと思います。

5687版は3dbほどの負帰還量ですから、ご著書での解説のように安定です。まあ、発振を押さえ込む手段は概ね知られているとおりで、本機でもソレで事なきを得た訳です。

感じたのは、7dbほどの負帰還量にしては「発振しやすい」印象です。それほど多くの製作例を経験したわけではないので、断定的な事はいえませんが・・・。ともあれ基本に帰って、いままで食わず嫌いだったループ位相などの測定から調べてみました。

6R-H2版ループゲイン・位相 6R-H2版 8Ω負荷 6R-H2版 負荷開放 6R-H2版 0.1μF負荷

言い訳がましいのですが、位相測定がはぢめてなのです。ぺるけさんのご著書と、近年買えたSS-7810オシロのおかげで、やっとその気になったワケです。よって・・・測定精度には・・・語尾不明瞭。

初段込みの全段のオープンループ特性と、6R-H2出力段のみの負荷違い条件3種を掲げますが、無負荷時の出力段高域ポールは8Ω規定負荷時より上昇し、100kHz程に移動している点は気になってます。2SK30A→6R-H2間のポール(実測140〜150kHz・・・精度の確証は?だが)と接近しているのは明らかです。

6R-H2版・改造回路図 そこで、5687版並みに段間ポールを引き上げ、スタガ比の確保を考えたのが左の改造実験で、「CIMG0494.JPG」に見える2SC1815のエミッタフォロワが追加部分です。

コレにより、段間ポールは≒600kHz/−3dbにまで隔離され、期待は大きかったのですが・・・残念。0.047μF時のみVol最小なら発振しなくなっただけの改善に留まりました。Vol上げると発振します。0.1μFではVol位置に関わらず、改造前と同じく無条件で発振します。

これはもう単なる高域ポールのスタガ比とは、別のメカニズムで発生しているのだと考えました。容量負荷で最も影響を受けるのはOPTでしょうから、東栄T-1200で何が起きているのか調べてみましょう。

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出力トランスの挙動の謎

頭を切り替えて、OPT一般の文献を漁りました。とある本で「OPTの高域は2次の時定数相当」の記述を読みました。一般的等価回路表現でも、高域は漏洩インダクタンスと分布容量で2次LPF特性を示します。ところが実測したT-1200を含む各種F特や、ぺるけさんのご著書でもそれをうかがわせる特性が見られません。いや、良く見ると10k〜100kHz間は1次の高域下降カーブですが、100k〜130kHz間は2次(いやもっと高次か?)を思わせる急峻な下降が見られます。130kHzの最初の谷から上は派手な山谷を描き、思考の埒外の領域です。

くどい文章になりましたが、もしかするとT-1200の高域ポール≒20kHzは、1次の高域下降の途中にあり、これは漏洩インダクタンスが支配する帯域での振る舞いかと思いました。なら、OPTの1次巻線インピーダンスの周波数特性を調べると、なにか掴めるだろうと考えました。簡易法式ですが測定回路はコチラ。精度はいささか信頼性に欠けるやり方ですが、特性傾向は把握できると思います。

T-1200・Zp うむ、見事にインピーダンスピークが見られます。根拠にするにはまだ希薄だが、この手のピークは漏洩インダクタンス「大」のタイプだと、武末先生の文献で解説されていた記憶があります。

乱暴ですが、無負荷のOPT2次に容量が負荷されると、これと漏洩インダクタンスが共振し、発振条件を満たす位相変移に至るんじゃあないかと。

F-2005・Zp 同じくZp=7kΩのタムラ・F-2005ではインピーダンスカーブが異なります。

間接的実証ですし、比較サンプルとして適切かどうかは疑問ですが、本機に使用しますと0.005〜0.47μFまでの純容量負荷でも発振に至りません。ヘンな理屈かもしれませんが、桁違いの物量コスト差は高域特性を支配する巻線設計・構造に直結しないと考えますがいかがでしょうか。

F2005で容量負荷試験中 各方面に差障りがあると危惧しつつ申し上げると、T-1200の個性でしょう。あえて欠点・・・と言い切る度胸はありません。容量負荷に敏感なタイプだと理解しました。

追試:平田電機TANGOのU-808(5kΩ使用)も試しました。0.005〜0.47μFまで耐えます。Zpも異なるので比較サンプルとしてはど〜かな?。

**** 中途半端なレポートは、これで終了です。改造追加の2SC1815エミッタフォロワは除去、元の構成に戻します。発振対策は各種高域補正に頼る方針に回帰しました。

←6R-H2は丈が低く、半分しか見えません。

今回学んだのは、OPTの複雑怪奇な振る舞いの一端に過ぎないのでしょう。奥が深い世界です。なお、音は・・・普通に鳴ってます。5687版との違いが聞き分けられないのは情けないのですが。

(20130927終了)

後日談:6R-H2を別件に使う妄想が湧きまして、今は東芝の5842に差し替えました。幸運にも似たバイアスの球なので、似た電気的特性を確認しております。音?・・・う〜ん、全部同じに聴こえます。

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20131219追記

東栄・T-1200の周波数特性を測定された方がいらっしゃいました。「出力トランスデータ T-1200 - クジラ丸のブログ - Yahoo!ブログ」で公開されてます。まことに勝手ながら引用させていただきます。

img_1546333_64759000_0 img_1546333_64759000_1 注目したいのは1次インピーダンスの周波数特性まで測定されているところです。

測定条件として、下記の条件も提示されてます。

「出力電圧周波数特性測定条件:測定端子1次側 7kΩ、2次側 8Ω: 1次側の直流重畳無し、信号源インピーダンス 6.8kΩ 測定電圧 1次側に1Vの一定電圧を与える 2次側に負荷8Ωを接続して負荷端子の電圧を測定する」

「インダクタンス 19.70(H) 120Hz/1V, 2次側解放、直流重畳 ゼロ 328mH 10kHz/1V 直流抵抗 1次側 317Ω 室温25度(たぶん?) 2次側 0.57Ω 0-8間 巻き数比:28.244  7K:8 伝送効率: 89.2% (-0.496dB). 」

本件の測定条件とは異なりますが、類似した傾向は見て取れます。同じくZpピークを捕らえておられます。

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「Mini Watter」ぢゃ無くなるECL-83版の妄想

思ふ事あり、6BM8系の多極管接続出力段で組んでみたい。T-1200のZp高域ピークが高rp では如何なる振る舞いを示すか調べたくなりました。イヤ別に6BM8でなくても良いが、名が知られているし、片ch1本で済むし。

ここで勝手な解釈を披露しましょう。Mini Watterでは“ミニパワーであっても広帯域でスケール感のある鳴りっぷりであること”が条件なので、「Mini Watter」のカンバンを下ろせば多極出力段でも・・・と。更に言えば、T-1200を調べるためのテーマです。偏ってるなあ、もう。

11BM8版Mini Watter試案 電源事情、及びRL=7kΩ使用のために、動作条件は「標準動作例」から逸脱せざるを得ません。Eb=170V、Ec2=100V、RL=7kΩ、Ec1<10V、Ib=20mAを妄想。出力には無頓着です。

出力段Rkのバイパスは、総合利得しだいですが省略を考えています。DF低下を「悪化」と言うのなら・・・反論しませんけど。

持ってないけど、If=0.45Aの11BM8を選びました。6BM8なら直列点火か。

3行空けのために・・・こげなことを

と、ここまで考えていましたら、掲題の「ECL-83」の存在を知りました。悪名高い2chの書き込みからですが「ECL82/ 6BM8のカワイイ弟のECL83 http://www.r-type.org//aai0108.htm これは かわいい( ´∀`) ヒーター違いのUCL83(38V)だと安い。」

ECL83 もしかしたら「妹」かもしれませんが、確かにカワイイ感じ。WEB上に写真が見つからないので、実物はどうでしょうか。

なお、「for use in audio frequency application」と記されているように、音声増幅の動作例のみ。

この子でやるなら、直列点火しかない・・・。

ECL83p(T)Eb-Ib推定 最近の習い性、得体の知れぬタマの性格判断?をこれでやってます。rpは6BM8系より高く、6GW8p(T)や6BQ5(T)ほどかと。ただし、gmは低いので別系統の出身かな?。

3結でも1W近くは出そうな感じです。ただし電源事情の上限から、1W以上はキツいかもしれません。

データーシートの標準動作例では2Ibo>40mAなので、Mini Watter規模では過剰。Eb=Ec2=170VのままRL=7kΩにすれば、案外それ以下に収められそうです。ただし、Ec2=170Vでは負荷線が「肩」より下を通る・・・いくらナデ肩とはいえ、Ec2は過剰かと考えます。杞憂かもしれませんが、ebminが標準動作例のRL=5.5kΩより更に低下して、ic2maxを増加させます。極端な例を想像しますと、無負荷で「最大振幅の発振」などが起きたら可哀想です。例によって実験でEc2の塩梅を探るのが良いでしょう。Ec2≒100V内外と見当をつけてはいますが。

なお、ec2min≒50Vと見積もって、1Wくらいかと。この場合、遊び電流があるので、Iboを17〜18mAに絞っても良いかもしれません。ま、全て実験で可否を判断しましょうか。

ラッパ坊やでした 買いました。小さいです。カワイイ。中身ぎっしり感あります。奥にコロがした東芝12AX7と同じ寸法で、Pomax=2.5Wはホントかいな。コレにPp=5Wぶち込む気になれません。

ビューグルボーイですから弟でしたね。管壁に文字は多く、「Lf1 B4F1」とも書いてある。MADE IN GT.BRITANIって、“Mullard”製造を妄想したりする。

3行空けのために・・・こげなことを

妄想して、買って・・・未だ手付かず・・・。

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