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Artist

ARSENIO RODRIGUEZ

Title

ARSENIO DICE...



Japanese Title アルセニオ・セッズ〜ラ・パチャンガ
Date 1968
Label Pヴァイン PCD-2707(JP)
CD Release 1993
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 アルセニオは、1970年(71年、72年説あり)12月30日、ロサンゼルスにおいて肺炎で亡くなった。無一文の不遇な最期だったという。“サルサの女王”として世界中のラテン・ファンから敬愛されているセリア・クルースとはあまりに対照的な生涯。
 1947年、眼の治療のためにはじめてアメリカの地を踏みしめてから、永住を決意するまでは、アメリカは理想の国、希望の国と映っていたにちがいない。しかし、アメリカはアルセニオとかれの音楽を受け入れたとはいいがたかった。アルセニオの音楽が、アメリカのラテン・シーンで受け入れられるには、サルサの登場を待たなければならなかった。

 ところで、68年にリリースされた本盤は、60年代はじめに同じティコから出た『ラ・パチャンガ』と2オン1でCDリイシューされた。アルセニオのラスト・アルバムともいわれている。
 開巻、アルセニオが例のダミ声で熱きソン・モントゥーノの幕開けを告げる。続いて、切なく美しいボレーロ。アルセニオはアコースティック・トレスに持ち替えて淡々とリズムを刻む。個人的には本盤中いちばん好きな曲。このようにLPではA面にあたる前半はリズミカルな曲とボレーロ調のしっとりした曲がほぼ交互に配置されている。アルセニオのダミ声とハンド・クラップではじまる5曲めの'VEN MI MOA' では、セプテート・ナシオナール'ALMA GUAJIRA'のフレーズを差しはさんだりして楽しさも格別!

 LPではB面にあたる後半の5曲は、比較的正統キューバ調だった前半とはうってかわって冒険精神にあふれた曲が並ぶ。なかでも、最大の異色曲は'DADDY GIVE ME CANDY'。アルセニオがスイング調のフォー・ビートにのせて、英語で歌うのにはビックリ! 続くスロー・テンポの曲もボレーロというより演歌調のジャズ・バラード。そして、あの名曲'LA VIDA ES UN SUENO'の一節の引用から始まるしっとりしたボレーロ'LA VERDAD'をはさんで、アルセニオのダミ声とハンド・クラップが大活躍する陽気なポップス'QUENDEMBO JAZZ'で締めくくる。

 このように、冒険精神の点では『ラ・パチャンガ』と同一線上にあっても熱さがぜんぜんちがう。むしろ、テイストは"QUINDEMBO - AFRO MAGIC"に近い。お世辞にも名作とはいいがたいが、全編遊び心にあふれていて楽しめる1枚といえる。


(9.22.01)



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by Tatsushi Tsukahara