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Artist

SEPTETO NACIONAL DE IGNACIO PINEIRO

Title

SEPTETO NACIONAL DE IGNACIO PINEIRO



Japanese Title セプテート・ナショナール・デ・イグナシオ・ピニェイロ
Date 1927-1936
Label RICE CSR-401(J) 2000
CD Release 2000
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆◆


Review

 キューバ音楽の最重要人物イグナシオ・ピニェイロが1926年に創設したセステート(のちにセプテート)・ナシオナールの初期音源は、代表的なものとして、トゥンバオから99年にリリースされた、27年の初録音から28年前半にかけてのセステート時代の音源を集めた"CUBANERO" (TCD-097)と、やはりトゥンバオから92年にリリースされた、トランペットが加入してまもないセプテート初期の28年と30年の音源からなる"IGNACIO PINERO AND HIS SEPTETO NACIONAL" (TCD-019) が、まず挙げられよう。しかし、上記2枚、とくに前者はコアなキューバ音楽ファン向けの内容といえ、そういう意味では、ソンの黄金期を飾ったこのグループの音楽の変遷を、ていねいな解説とともに年代を追って楽しむことができる日本独自編集盤を推したい。選曲にあたった田中勝則氏は「キューバ音楽を、より楽しむための第一歩にしていただきたい」と述べておられるが、まさしくそのとおりで、なにより聴いて素直に楽しめるところがいい。

 前半部分はトゥンバオ盤と何曲か重複しているが、ピニェイロの代表作のひとつに数えられる「スアベシート」、黒人系の民俗音楽ルンバ・グァグァンコーのディープな要素をとりいれた「スティレーサ」、都会生まれのソンにたいして田舎生まれの白人系音楽であるグァヒーラを歌った「南国のカデンシア」「音を学ぶ」、スピーディなボンゴが炸裂するファンキーな「君のためのコンガ」、さらにグループの支柱であったピニェイロが34年に脱退後、マルセリーノ・ゲーラチェオ・マルケッティ(かれらはのちにアルセニオ・ロドリゲスのコンフントに加入)、ビエンベニード・レオーン(セリア・クルースが看板になるまで、ラ・ソノーラ・マタンセーラの中心歌手をつとめる)など、より若い世代が加入してきた時期の録音など、トゥンバオ盤では聴けなかった演奏の数々が収められているのがうれしい。

 アルバムの最後を飾る21曲目には、ピニェイロがナシオナールと併行して参加していたロス・ロンコスというディープ・キューバなルンバ・グァグァンコーのグループの歌と演奏がおまけとして入っている。こんなところにも、選曲者の、ナシオナールとキューバ音楽に寄せる熱い思いがヒシヒシと伝わってくる。心して聴くべし。


(1.16.02)
 かれらの音楽をはじめて聴いたのは、ご多分に漏れず、90年に国内リリースされた『セプテート・ナシオナール・デ・イグナシオ・ピニェイロ』(Pヴァイン PCD-2147)だった。本盤は、音楽学者オディリオ・ウルフェーの説得により、ピニェイロが再編したナシオナールによる54年ごろの録音という説が有力。
 ヴォーカルには、先ごろ亡くなるまでナシオナールを率いてきたカルロス・エンバーレを新たに迎え、サウンドも20〜30年代よりもずっと泥臭い。ヘタレ気味のトランペットからもわかるとおり、エンバーレを除けば、大半が往時のメンバーで構成されていたのではなかろうか。

 「スアベシート」「エチャレ・サルシータ」「バルド」「エサス・ノ・ソン・クバーノス」など、ピニェイロの代表的な名曲が収録されていて、ソンの伝統を保存する意味合いでの録音だったのだろうが、サウンドをグイグイと引っぱる力づよいトレスをはじめ、演奏内容はきわめて良い。現在、国内盤は入手不可かもしれないが、輸入盤でならたぶん手に入ると思うので、これからナシオナールをというひとは、多少シブイが、まずはこれを10回繰り返し聴いてみよう。「これぞキューバ音楽!」というエッセンスがぎっしりと詰まっている。曲に合わせて口笛が吹けるようになったら、あなたはもうすっかりキューバ音楽マニア。


(6.1.02)


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by Tatsushi Tsukahara