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Artist

CHANO POZO & ARSENIO RODRIGUEZ WITH MACHITO AND HIS ORCHESTRA

Title

LEGENDARY SESSIONS



Japanese Title 国内未発売
Date 1947-1953
Label TUMBAO TCD-017(CH)
CD Release 1992
Rating ★★★★☆
Availability ◆◆◆


Review

 ディジー・ガレスピーのもとでアフロ・キューバン・ジャズの形成に絶大な貢献をしたコンガ奏者チャノ・ポソとアルセニオがニューヨークで奇跡的な出会いを果たしたまぼろしのセッションを収めたCD。

 キューバ出身のチャノは1947年1月にニューヨークへわたるが48年12月にハーレムのバーでケンカして射殺されてしまったから、ニューヨークでの活動期間は事実上2年間にすぎない。アルセニオはというと、チャノがガレスピーと出会うほんの数ヶ月前の47年2月に、眼の治療のためにニューヨークへやって来た。この2人の巨人による伝説的なセッションはそんな偶然が重なって実現したものである。わたしは、共通の友人であったミゲリート・バルデースあたりが2人の仲介役をはたしたのではないかと推測している。

 本盤には、チャノ・ポソのコンフント名義の演奏が2曲。マチートのフル・オーケストラを借り受けたチャノ・オーケストラ名義の曲(ヴォーカルは若き日のティト・ロドリゲス!マチート本人は不参加)が4曲収録されている。コンフントの2曲はチャノ・ポソ作のソン・モントゥーノ。アルセニオのトレスが前面にフィーチャーされ、主役のポソより目立ってしまっている。実質的にマチート・オーケストラとなる演奏では、アルセニオのカラーはまったく感じられず、チャノ・ポソらしいアフロ・キューバン・ムードが展開される。さすがにアルセニオ作なる最後の曲のみは、曲調もいかにもという感じで、間奏部にはトレス・ソロも用意されている。両セッションともアルセニオならではの濃厚なコクがやや稀薄なのは仕方ないだろう。ちなみに、2000年に発売された"CON SU CONJUNTO Y CHANO POZO, MACHITO & ORCHESTRA"(Musica Latina 55019) には、この6曲とTUMBAO TCD-043の全19曲から12曲が収録されている。

 続く6曲は、キューバ帰国後の48年に自己のコンフントでおこなわれた全盛期の演奏。いまさら説明の必要もないだろう。ニューヨーク録音とこうして聴きくらべてみると、1音1音がズシリと手応えのあるパーカッションと、リリーのリズミカルで地を這うようなピアノにとりわけちがいを感じてしまう。ちなみに、99年に発売された"TOCOLORO"(Musica Latina 55006) には、この6曲とTUMBAO TCD-031の全18曲から12曲が収録されている。

 残る4曲は、ニューヨーク移住まもない53年にレコーディングされた。すべてアルセニオの代表曲がメドレー形式でつづられるユニークな構成で、おそらくアルセニオの顔見世的な意味があったのだろう。アルセニオといとこのスクール(弟のキケとカエサルも入っているかもしれない)以外は、ニューヨークで調達したメンバーで、カシーノ・デ・ラ・プラーヤ出身で47年のチャノ・ポソとのセッションのときにマチート楽団でピアノとアレンジを担当していたレネ・エルナンデスが参加している。さすがにキューバ時代にくらべると、リズムに甘さを感じるものの、アルセニオのトレスはベスト・プレイといってもいいほどの絶好調ぶりで、アルセニオらしい重厚な仕上がりになっている。
 以前、中村とうよう氏が編集・選曲したオーディオ・ブック『キューバ音楽入門』(オーディブックAB05,1990) にこのうちの1曲が収録されており、そこではキューバ時代の48年録音ではないかとされていた。解説によれば、当初ロス・エストレージャス・デル・リトモ名義で発売されたのは、キューバ時代に専属関係にあったRCAの手前、変名を使わざるをえなかったとのことだが、本CDの発売によって5年後のニューヨーク録音と判明したことから、わたしは、変名と思われたものは、アルセニオがまだレギュラー・バンドを持たず、このレコーディングのための寄せ集め的なメンバー構成だったためではなかったかと推測している。いずれにしても、あの中村氏がキューバ時代とまちがえるぐらいに充実した演奏内容。この4曲は、現在のところ、本盤以外にはCD化されていない。


(9.9.01)



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by Tatsushi Tsukahara