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Artist

TRIO MATAMOROS

Title

TRIO MATAMOROS


TCD039
Japanese Title 国内未発売
Date 1928-1950s
Label HARLEQUIN HQ CD69(UK)
CD Release 1997
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 キューバ音楽史上に燦然と輝く大名曲「ソン・デ・ラ・ロマ」のオリジナル・ヴァージョンで幕を開ける本盤は、1928年から50年代までの録音を、ヴァラエティに富んだ編成で楽しめるベスト・アルバムと呼ぶにふさわしい名盤。

 28年にトリオ編成で録音された「ソン・デ・ラ・ロマ」は、後年何度も再演されたものにくらべて、かなりアップテンポで、ミゲールとシロのハーモニーにもまだバラツキがある。クラベスを受け持ったシロにいたっては、ときどき打ちまちがえたりして、おおらかというか粗っぽい印象は消せない。だが、そんなところが逆に瑞々しく愛らしくもある。

 この傾向は、同年、トレス、ベース、ティンバーレス、クラリネット(またはチャルメラ)を加えた異色の編成で臨んだセプテート・マタモロスにもいえること。歌い方はミゲールっぽくないし、トレスはマンドリンのようだし、(同時期の他のグループにもいえることだが)全体にざわざわしたムードがある。しかし、セステート・アバネーロを彷彿させる正統派のソンを演じたという意味で、この4曲はたいへん貴重。

 3年後の31年に録音されたトランペットを加えたクァルテートによる2曲は、音が整理されグッとタイトになる。ミゲールとシロのヴォーカル・ハーモニーもコントラストが鮮明になり全体にメリハリが出てきている。この時期に、不朽のマタモロス・サウンドのスタイルが完成したといえよう。

 本盤最大の聴きどころは、34年のオルケスタ・マタモロスによる'TUNO YO SI' だろう。この曲も後年、何度か再演されている名曲だが、30年代に世界的なルンバ・ブームをまき起こすきっかけになったドン・アスピアス楽団の「南京豆売り」'EL MANICERO' の影響を受けているとみるのは勘ぐりだろうか?余談だが、アスピアス楽団が「南京豆売り」を録音する1年前の29年にトリオ・マタモロスですでに録音している(TUMBAO TCD-016、TCD-801)。

 コンフント・マタモロスを結成した年にあたる42年に録音した2曲は、トゥンバオ盤(TCD-020TCD-044TCD-070)との重複はない。なかでも、ミゲールの'PLAY BALL'という曲は、いかにも野球好きな国民性が目に浮かぶとても楽しい曲。

 50年代の音源(正確な録音年は不明だが55年以前か?)は、全21曲中7曲をしめる。トリオにリズム隊が加わった歌と演奏は、もはや他の追随を許さぬ完成度の高さ。興味深いのは、'POBRE BOHEMIA'のイントロと間奏は「ソン・デ・ラ・ロマ」'MATAMY BEBY'のサビの部分と間奏は「忘却」そのままであること。ボレーロとソンを融合させたボレーロ・ソンはミゲールの編み出した18番だが、ここではブルース・ソンなる珍曲を披露している。大スイセン盤!


(8.31.01)



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by Tatsushi Tsukahara