World > Latin America > Caribe > Cuba

Artist

PEREZ PRADO AND HIS ORCHESTRA

Title

KUBA-MAMBO



Japanese Title 国内未発売
Date 1947-1949
Label TUMBAO TCD-006(CH)
CD Release 1991
Rating ★★★☆
Availability ◆◆◆


Review

 ダマソ・ペレス・プラードがまだキューバっぽさを残していたとされる初期のキューバ録音だが、わたしの耳にはもはやアフロ・キューバン・ジャズにしか聞こえない。つまり、キューバ音楽にジャズの方法論をとりこんだというよりも、ジャズをキューバ風に味付けしてみたという感じ。インストゥルメンタル中心の構成で、全22曲をとおして聴くのは正直いってツライものがある。プラードは、本国キューバで認められなかったというが、なるほど、かれのサウンドは、それまでのどんなキューバ音楽よりもパワフルで豪快だが、直線的すぎて“緩さ”からくるエレガンスがあまり感じられない。なんかヤケクソな感じがする。バカのひとつ覚えのような「ウーッ!」だけじゃもたないぞ。

 ところで、マンボとペレス・プラードの名まえを一躍世界に知らしめた大ヒット'MAMBO No.5'は、かれがメキシコへ渡ってから作った曲だが、ここには同じタイトルの別の曲が収録されている。この曲と続く'MI CAZUELITA' は、ホーン・セクションを廃し、セロニアス・モンクとバド・パウエルとセシル・テイラーをかけ合わせたような、クラッシュするほどに過激でパーカッシブなプラードのピアノがフィーチャーされ、すこぶるスリリング。本盤のハイライトといっていい。かれにとっても、この曲は自信作だったにちがいなく、後年のヒット曲はこの曲にあやかって命名したのではないか。

 そのほか、変わったところでは、48年にケンカがもとでニューヨークで射殺されたアフロ・キューバン・ジャズの立て役者、チャノ・ポソの死を悼み、その翌年に録音された'MEMORIA A CHANO'。曲の雰囲気がミゲリート・バルデース'BABALU' そっくりのアフロ・マンボ?で、チャノの演奏スタイルをなぞっていて興味ぶかい。

 プラードの音楽の最大の難点は、キューバ音楽の持ち味というべきエロティシズムがあまり感じられないことだと思う。そうした欠点を埋め合わせていたのが、たとえばベニー・モレーのヴォーカルであったように思う(TUMBAO TCD-010)。ここでは、'SUAVECITO POLLITO' にゲスト参加しているオルケスタ・カシーノ・デ・ラ・プラーヤ時代の仲間だったカスカリータがその役割を果たしている。カスカリータの強弱と緩急を巧みに使い分けたヴォーカルが、プラードのサウンドに柔らかい表情を与えている。でも、これってデ・ラ・プラーヤのサウンドじゃないかといわれてしまえば、身もフタもないのが‥‥。この曲をおもしろいと感じたひとは、同じトゥンバオから出ているORQUESTA CASINO DE LA PLAYA "MEMORIES OF CUBA 1937-1944"(TCD-003) CASCARITA "EL GUARACHERO 1944-1946" (TCD-033)を聴いてみることをおすすめします。これぞキューバ音楽の醍醐味というべき、めくるめくラテン世界が展開されています。


(10.2.01)



back_ibdex

前の画面に戻る

by Tatsushi Tsukahara