World > Africa > Democratic Republic of the Congo | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
FRANCO & OK JAZZ (MUJOS, SIMARO ET KWAMY) |
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Title | ||||||||||||||||
1960/1961/1962 |
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Review |
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1960年1月、独立のための円卓会議がブリュッセルで開かれた。これに同行したのが、グラン・カレこと、ジョゼフ・カバセル Joseph Kabasele 率いるアフリカン・ジャズの面々であった。これには、カバセル、ニコ 'Docteur Nico'、ドゥショー 'Dechaud'、ロジェ Roger Izeidi のオリジナル・メンバーに加えて、O.K.ジャズから、なんと!リーダーのヴィッキーとブラッツォがグループを脱退して参加。フランコはもちろんいい顔はしなかったけれども、さしものヴィッキーも「ヨーロッパへ行ける!」という誘惑には勝てなかった。かくいうフランコもおなじ年、カバセルのさそいで渡欧しているのだから、ヴィッキーばかりを責められまい。 ブリュッセルで、アフリカン・ジャズは、カリブ海グァドループ出身でビギンを得意としていた歌手ジル・サラがパーソナリティをつとめるラジオ番組にゲスト出演している。サラは、かれらの音楽スタイルの完成度や演奏能力の高さに驚嘆している。コンゴのポピュラー音楽が西欧世界に本格的に紹介されたのはこのときがほとんどはじめてだったはずだから、ラテン・アメリカ系音楽がアフリカでこのように見事に花開いているとは想像だにしていなかったことだろう。 ちなみに、有名な「独立チャチャ」'INDEPENDANCE CHA CHA' は、このときに録音された。この曲は、いわばアフリカン・ジャズとO.K.ジャズの共同作業だったといえるかもしれない。 余談だが、フランスのパテというレーベルに残された50年代のビギンを収めた2枚組CD"ANTILLAISEMENT VOTRE... :BIGUINES-SALSA (SUCCES DES ANNEES 1950-1959) "(EMI 2534062)の元となった2枚組LPを選曲・編集したのがジル・サラそのひとである。このアルバムにもサラ自身の歌が4曲収録されているが、もうエエっつうぐらいに甘美で口当たりのよいサウンドは、なるほどアフリカン・ジャズとの共通点が感じられないではない。キング・レイディオがヒットさせた'BROWN SKIN GIRL'(『ゴールデン・イヤーズ・オブ・カリプソ VOL.1』(オーディブック AB101)に収録)を“ビギン−カリプソ”としてリメイクするなど、フランスのハリー・ベラフォンテのようなひとだなと思った。 さらに追い討ちをかけるように、レオポルドヴィルの対岸にある、コンゴ共和国(旧フランス領コンゴ)の首都ブラザヴィルで、O.K.ジャズの元メンバーのエッスー、パンディらで結成されたオルケストル・バントゥ Les Bantous de la Capitale に参加するため、ヴォーカルのエドとベースのドゥ・ラ・リュヌが脱退するという緊急事態に見舞われた。 主要メンバーの相次ぐ脱退でグループの建て直しを余儀なくされたフランコは、ヴィッキーの代役にさすらいのヴォーカリスト、ムジョス Joseph 'Mujos' Mulamba を抜擢する。そして、ブラッツォの穴は、ボーレン Leon 'Bholen' Bombolo と、のちにフランコの片腕となるシマロ Simon 'Simaro' Lutumba で埋め合わせた。このとき、シマロはあくまでも助っ人としての参加だったらしく、レコーディングを済ませるとすぐに脱退。正規に加入したのは63年のことである。 かれらとともに忘れてはならないひとりの男がこの時期、O.K.ジャズに加入している。その男の名はクァミー Jean Kwamy Munsi といって、60年代前半のO.K.ジャズを支えたヴォーカリストのひとりである。かれは、のちにフランコと泥沼の格闘を展開することになる。 ところで、アフリカン・ジャズの一員として渡欧したヴィッキーとブラッツォだったが、ふたりとも帰国後まもなく脱退。ブラッツォのほうはO.K.ジャズにすぐ復帰したが、ヴィッキーは、O.K.ジャズからギターのボーレンと、ヴォーカルのジェスキン Hubert 'Djeskin' Dihunga をひっぱりこんでネグロ・シュクセ Negro Succes を結成する。ヴィッキーがフランコと和解したのは62年のことだった。 ヴィッキーとほぼおなじ時期、オルケストル・バントゥに行っていたエドとドゥ・ラ・リュヌも復帰している。 じつは、60年代前半のころのO.K.ジャズのメンバーは、あまりに入れ替わりが激しいうえ、おなじ人物が入ったり抜けたりしていて前後関係がよくわからない。おもに参考資料としているGRAEME EWENSの"CONGO COLOSSUS: THE LIFE AND LEGACY OF FRANCO & OK JAZZ"(BUKU PRESS, 1994)とGARY STEWARTの"RUMBA ON THE RIVER"(VERSO, 2000)にしても、両者のあいだで見解がちがうことがよくみられる。つまるところ、CDに記載されている発売年と作者名、そして音を頼りに判断せざるをえないというのが本当のところだ。だから、ここでの記述は、事実というより推測である点を留意して読んでください。 サブ・タイトルに“ムジョス、シマロ、クァミー”とあるとおり、本盤はかれら新メンバーによる60年から62年までの録音を集めたもの。全22曲中、ムジョスの作品が13曲なのにたいし、フランコの作品はわずか5曲ということからわかるように、本盤はムジョスに焦点を当てたつくりになっている。ほかにドゥ・ラ・リュヌが2曲、シマロとシメオンが1曲ずつ提供。シメオンはだれなのかわからない。(追記/シメオンは、もしかしたらバントゥのアルバム"1963/1969"(SONODISC CD 36527)で'PITIE' という曲を提供していたRikky Simeon そのひとではないか? O.K.ジャズとバントゥの深いつながりを考えると、あながちまちがいではなさそうである。) また、この時期の録音の特徴として、1曲の演奏時間がみな判で押したように2分30秒から3分の範囲内であるということ。50年代の録音では3分をいくらかこえることもめずらしくはなかったのにこれはどうしたことか。 だからかどうか、O.K.ジャズのアルバムのなかではもっともポップで軽い仕上がりになっている。アルバムの前半部がとくにそうで、50年代のメレンゲのような質感だ。 同時期の録音を収めたものとして、ほかに "FRANCO ET L'OK JAZZ VOLUME II 1958/1962"(AFRICAN/SONODISC CD 36505)と、"VOLUME III 1961/1962"(同CD 36508 )がある。 本盤と音の感じがもっとも近いのは"VOLUME III"の前半部。ラテン色の濃いマイルドなアルト・サックスや、メレンゲのタンボーラに似たポコポコしたコンガからして、本盤とほぼおなじメンバーによる同時期のセッションではないか。8曲目あたりから、ちょっとくぐもった音色で「キュッ、キュッ」というミストーンが連発する特徴あるテナー・サックスに代わるが、このタイプの演奏もいくつか含まれている。 ところが、クァミーの作品が何曲か登場する"VOLUME III"の後半部、それからフランコ作品が大半をしめる"VOLUME II"の前半部のサウンドは、おなじ62年とあっても、本盤とはあきらかに異質だ。とくに"VOLUME II"には、楽曲提供者にヴィッキー、エド、ブラッツォの名まえがみられることから、かれらが復帰後の録音と思われ、本盤にくらべると、サウンドの構成がタイトかつ緻密になり、曲ごとのヴァリエーションもはるかに豊かになったのがわかる。フランコのギターワークも水を得た魚のようにのびのびとしている。 思うに、本盤が録音された時期は、O.K.ジャズにとって過渡期にあたるのではないか。主要メンバーの相次ぐ離脱によりグループ存続の危機に立たされたフランコは、とりあえずはいまの人気を維持し続けることと、新しいO.K.ジャズの音楽を創造することのふたつを同時に充たす必要があった。だから、フランコは手当たり次第に、多くのミュージシャンを試してみたのだろう。 正直なところ、個人的な好みでいえば、このアルバムや"VOLUME I 1957/1958/1959" (AFRICAN/SONODISC CD 36502)よりも、"VOLUME II"と"VOLUME III"のほうが肌に合う。だが、初期O.K.ジャズが絶頂期をむかえるのは、ヴィッキーが復帰し、ヴェルキスがサックスで加入した63年以降というのが持論であるわたしにとって、その前段階であるこれら2枚をどうしてもはずすことができなかった。 このような事情から、初期のO.K.ジャズをすでに何枚か持っているひとにはおすすめできても、これからエントリーしたいと思っているひとにはおすすめしにくいアルバムであることをことわっておこう。 |
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(7.27.03) |
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