30A5・SRPP

20090329〜20090813


目次

OTLへの道、第一弾
製作
特性
SRPP形式の感触


はじめに

同好の先輩から「ハ□ド○フにMT管が沢山出てるので、見に行こう」とのお誘いから始りました。6R-P15シングルを手掛けている最中だったので、予備の無い6CA4でも見つかりゃエエなあ・・・くらいの気持ちで同行させていただきました。ありました!・・・ひと括りの袋に30A5や30MP-27も一緒くたで○○○円・・・。別の袋には同じく6CA4と6BM8、7189も同梱。更に別のには6CA4、30M-P27、見知らぬ30M-P23・・・。なんだかクラクラしてしまい、この日は4袋購入。

これで6CA4のストックは充分ですが、6BM8や7189は別にして、30V管の処遇に困りました。いや、使い道が無いのではなく、作りたいアンプが「また」増えたのですから、やっぱり困った事なのかな?。売り場から撤去されるまで、何度も買いに行きました。不用球(ラジオ球多数)も含めごっそりと大人買いしときゃあ良かったなあ・・とイケナイ事も考えましたねえ。

2018某日追記:ぺるけさんのHPにて

「16A8(3結)全段差動PPおまけ・アンプ 」からの引用ですが。『本機のヒーター回路はトランスレス式であり、2014年現在の安全基準を満たしていません。その昔、ごく当たり前に行われていたトランスレス式のヒーター回路は現在では使うことができません・・・』との警告文を拝見しました。困った。悩ましい。今後ど〜する。本機は自己責任(好かぬ言葉だが)にて「目を離さぬよう」運用するつもりだが・・・。


OTLへの道、第一弾

管球式OTLへの憧れは、昔からありました。6080などは1970年代から「中途半端」に集め始めまして、いつかはやるぞ・・・と考えていました。ただし、経験の少ない若輩者だった頃には相当「敷居」の高い形式でもあります。今から20年ほど前の記憶ですが、6080×2の実験に挑みながら「こりゃよっぽど数集めないと無理だ」と頓挫。未だに放置ネタとなっております。6080はその後も「まだ中途半端」ながら増やしつつありますので、情熱が枯れる前には手掛ける所存ではあります。

30Vレス管 昔話になってしまいましたが、OTL初心者には手頃な30Vレス管が、今回入手できた事は実に幸運です。「困った」などと言うのは贅沢です。早速まず1台拵える事にしました。表題のネタです。

左から、東芝30A5、松下30MP23、東芝30MP27?、松下30MP27、日立or早川30MP27。

30A5・SRPP回路図 イキナリですが、最終回路です。元ネタは例によって武末先生のラ技全書からですが、もちろんこんな作例はありません。

ラ技全書005A・203頁や同012A・277頁(これは多結SRPP)の出力段を下地に無理やり8Ω負荷をカマしたら、何Wが何%の歪みで得られるかを実験した上で進めた次第です。

初段の12AV6も手持ち1本に加え、同じ店で追加入手したタマです。12AU6も考えたのですが持ってないし、ソコにも売って無い。まあ12AV6でもイイか・・・くらいの安易な選択ですな。

入力端子の妙なカラクリは、死蔵4Pピンジャックのフル活用目的でして、Vol.→LPF→HPFを構成してるつもり。効きは後ほどに。8.2Ω経由の出力端子は、ちょっとでも楽させられんかな意図。効きはこれも後ほどに。

各部定数選択はロクに設計計算もせず、参考資料からの引用とバラック実験で得ました。悪癖とも思うが、習い性ですからと言い訳します。

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製作

バラック実験中 実験途中の本機です。小規模回路なのでSunhayato・AT-1W基板に収まります。

右端は合板端材組み込みの実験電源部。まだTOEI・Z-05は1個ですが、これが以降の30Vレス管シリーズのスタイルを決めるキッカケにもなりました。

ホンバン用基板 アンプ部の最終形態です。AT-1W基板一枚に増幅部と電源整流部が同居できました。贅沢にも左右完全独立形式となりました。

タマとケミコンが近いのは気にしてます。

30Vレス管シリーズ共用AC電源部 シリーズ共用になる電源部です。AC100Vライン剥き出しで、オススメできるスタイルではありません。なお、Fホルダ向こう側に見えるセラミックコンデンサ風の部品はパワーサーミスタです。ラッシュ電流の抑制に効くと聞いて、お試しで付けました。後に撤去しましたが。

出入りのコネクタ・インレット・アウトレットは、写真の姿勢では下向き・・・どーやって使うン・・・PTが接地面側に「ひっくり返り」ます。横倒しでもいいけど・・・PT角の発泡ウレタンクッションはそのための床面保護用。

なお、電源SWは省きました。旨く(簡単に)実装できる形状のものが見当たらない・・・ACプラグ先に付ける「中間スイッチ」で代用、もしくは個別ON/OFFできるテーブルタップを使います。

筐体加工後 フツーに弁当箱アルミシャーシーを買えば、従来どおりで楽なんだが、死蔵のパンチング鉄パネルを流用。固いのと、パンチング穴の目と実装する基板の目が一致せず、位置あわせに難儀しました。

鉄は加工時は固いのに、組み上げると撓むンですねえ。前後の合板端材は端子組み込みと、補強を兼ねています。

組み込み後 両chの基板が載りました。

ある程度分解しても、通電・点検が出来る構造を考慮したつもりですが、なんだか不自然・・・。変に凝ったスタイルを選んだツケです。

3行空けのために・・・こげなことを

前後左右が露出した「危険」な構造ですので、真似されると困ります。責任を追及されたらどうやって逃げようか。

3行空けのために・・・こげなことを

完成 W300mmxD200mmxH50mm(突出部を除く)の、小柄で軽い本体です。前後左右アッパッパーなので、通電中に触って感電しました。これじゃ危ないが、未対策のまま・・・。

ケミコン露出部に上パネルの“切抜きと折り曲げ”で、タマからの輻射熱保護・・・のつもり。大して効果なく、ケミコンのアタマは温かい。

入力は2系統、Vol経由で帯域制限入力と、TEST用直結入力です。手持ちVolの都合で左右独立は・・・不便、Bカーブだし・・・。など不満たらたらの出来上がり。見た目は好き・・・って・・・

3行空けのために・・・こげなことを

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特性

SRPPはいろいろ謎が多い・・・いや、不勉強なのが本音ですね。多くの方がされておられるような理論的・数学的解析はそちらにお任せするとして、本機はその点でトンでもない乱暴な設計である事は承知しております。それでも、まるでシングルアンプを作ってる様な気楽さがあります。そりゃそうだ、位相反転回路も無きゃ、打消しも要らん。完璧とは程遠いものの、負荷抵抗値が上がればナチュラルに歪みは低下します。実はもう1台、類似設計で目論んでもいます。

それはさておき、最適設計とは程遠い、無思慮・無分別SRPPアンプの電気的特性を掲げます。

30A5・SRPP無帰還F特 う〜ん、大した事無いFレンジ。高域は12AV6の出力インピーダンスが高いからかと思うが、低域はこんなモン?。270μFと8Ωなら≒74Hzだが、実際には出力インピーダンス≒200Ω(後述)が加わるので、2.8Hzのはずだが変だ。

30A5・SRPP無帰還歪み率 全ての測定レベル範囲で「1%以上」の大変な数値。さすがにこのままの音は聴いておりません。聴くべきだったか?。

実験メモでは、SRPP下球のRk≒240Ω(270Ω//2.2kΩ)に変更して、最大出力時の上下Ebバランスを“そこそこ”揃えたつもり。

30A5・SRPP無帰還ro 電流注入法。さすがに「ンW」以上のアンプで行ってきた注入電流値、0.125Armsは避けて、0.0125Armsで実施。中域≒200Ωは30A5の1/2・rp相当+αか?・・・実測数値に制御抵抗270Ωは如何に関わるのか、勉強してない・・・。

もしかして、初段カソードの全バイパスをもって「無帰還状態」を造ってたかも。だったら220ΩがZoを決めてるよ〜なチョンボだが・・・、思い出せませぬ。

以上無帰還時特性は、若干マシなRch側の特性。裸利得はL/R・18.1/18.7db。残留雑音は≒0.5mV。

負帰還後の利得はL/R・7.2/6.8db。帰還量は、10.9/11.9db。残留雑音は≒0.15mV。

30A5・SRPP周波数特性 同じく0db=0.1V。よく見るとTEST入力の低域が変。そりゃそうだ、Misic入力のカラクリが悪さしてる。

Vol.maxでも、続く22kΩと12AV6の入力容量で緩いLPFを形成。でも意味希薄な効きでした。

30A5・SRPP歪み率8Ω 8.2Ω挿入時でも出力はさほど変わらず、歪みは減り、DF値は1未満に。なぜか10kHz・100Hzの歪みを調べていない片手落ち・・・。

定格最大出力≒0.1W/8Ωダイレクト・・・がギリギリ(かなりの贔屓目)。

30A5・SRPP歪み率16Ω 16Ω負荷への特性、先の8.2Ω挿入相当。同じく10kHz・100Hzの歪みを調べていない片手落ち・・・。

出力ほぼ倍増・・・しかし16ΩのSPシステムは持ってない。

30A5・SRPP負帰還ro 同じく0.0125Armsの電流注入法。

ならば、8.2Ω経由ではZo≒11Ω。DF≒0.74/8Ωってことです。

3行空けのために・・・こげなことを

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SRPP形式の感触

総合して、ヘッドホンアンプ程度の規模ですね。でもMAIN・SP(多分97db/Wか)では充分鳴ります。一時期、DCプレーヤーのH/P出力(定格:10mW/32Ωだったか)で直に鳴らしてた事もあって、数10mWなら不足しないと実感しておりました。

容易に1%を超える歪みも聴いているはずなんですが、解りません。ただし、いつクリップするかヒヤヒヤするっちゅう意味での緊張感はあります。音質云々・・・というより、安心感の問題ですな。作った本人の印象ですからアテにならんかも知れませんが、「著しいミスマッチングのシングルアンプ+α動作」風と感じました。

無茶を承知で始めたのですから、30A5本来の実力は望むべくもありませんし、たった一作で云々するのは拙速ですが、感触は悪くありません。荒っぽい設計でもF特は良好ですし、結構な低負荷にも耐える印象でした。実は、類似形式で「測定用冶具」を拵えようかなとも妄想しております。冶具だが8Ωスピーカーも鳴らせるヤツをね。

E55Lと8608 そして毎度の「妄想だけ」が暴走。こんなの買ってど〜しよう・・・と悩んでましたが、半ばムリヤリの活用案。ダメだったらそのまんまご報告申し上げます。

こんな作例知らズ球は困るけど、楽しそう。作例無いから出来の比較もされんだろう、などと。

E55L(T)Philips Ppmax=10Wは充分、Ikmax=75mAはいささか不安なのでEbb=250V(Eb=125V)で作図。

ゼロバイアス電流は多分・・・30A5(T)を超え、SRPP用途に不適格とは思えません。なお、200mA以上が読めないけれど、ibmax≒250mAを妄想すりゃ8Ω負荷に0.2Wは出る・・・出て欲しい・・・出るんぢゃないかな。ま、ちと覚悟しとく。

330Ωのマッチングトランス使用で、3W級を期待・・・。SEPP計算に「則ってたら」のお話。

いっそ前段も高gm球にしたいが、5842や5847などはいかがかと。クドい選定ですが。

3行空けのために・・・こげなことを

時々・・・ 追記:ときどき引っ張り出して聴いていますが、以前の「ヒヤヒヤ」感は薄れ、別にどおって事の無い真面目な音です。内蔵8.2Ω経由でMAIN・SPでしか鳴らさないので、アレですが・・・。

3行空けのために・・・こげなことを

次は30Vレス管シリーズ第二弾、「30MP23・SEPP」に続きます。

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