30MP23・SEPP

20100808〜20110506


目次

故・藤井秀夫氏の直列シングルを試す 20090822〜
SEPPへの豹変 20100808〜
マッチングトランス試作 20101016〜
アンプ本体の工作 20110103〜
アンプ本体の出来栄え 20110403〜
***


はじめに

30Vレス管処遇第2弾です。実は当初、SEPPは念頭に無く、直列シングル(ラ技1998MAR・同1998APR、藤井秀夫氏)で構想しておりました。

30MP23は、ラ技全書002A「全日本真空管マニュアル」にも載ってましたが全く気にかけておらず、購入時の小分け袋に混じってなかったら無視してたかもしれません。これもナニカの縁でしょう。

2018某日追記:ぺるけさんのHPにて

「16A8(3結)全段差動PPおまけ・アンプ 」からの引用ですが。『本機のヒーター回路はトランスレス式であり、2014年現在の安全基準を満たしていません。その昔、ごく当たり前に行われていたトランスレス式のヒーター回路は現在では使うことができません・・・』との警告文を拝見しました。困った。悩ましい。今後ど〜する。本機は自己責任(好かぬ言葉だが)にて「目を離さぬよう」運用するつもりだが・・・。


故・藤井秀夫氏の直列シングルを目指したが

20160204〜

詳細は、氏の記事2稿をご参照願いたいのですが、シングルアンプが作りづらい低rp管の応用例として興味深いのです。ただし・・・フォロワーはおられないので、いささか忘れられた感のある回路形式。それでは自分が一丁拵えてみよう・・・くらいの意気込みはあったかもしれませぬ。

没ネタ 「変わった?回路」好きには堪らんネタで、「30MP23(T)・直列シングル」の妄想回路です。

藤井氏の第一作目からパクリました。ただ、7pの30MP23に9p管の前段はイヤだし、全球トランスレス点火したい・・・と欲が出ます。そして、極端に選択肢が限られた挙句選んだのは、12AU6の三結。

氏の記事中で、前段回路の電圧関係が窮屈との説明があります。極力低rp管が望ましいとも述べられておられ、う〜む12AU6(T)では荷が重いかも。

没ネタ 事前実験で、下側球だけのシングルアンプ・・・いや、全くフツーのシングル回路そのものの「お試し」しました。

30MP23(T)シングルは・・・1W近く出るものと思ってました。なお、TRブースターでドライブしたら1W出たのです。う〜ん12AU6(T)ドライブに拘って、4球使って最大1.5Wアンプかあ〜。

2球のシングル実験中 直列シングル前の下側球だけでシングル実験中。30A5・SRPPの実験基板流用、奥の2本はHだけ点火してます。

可否判断は・・・ひとそれぞれでしょうが、単純に「もっとパワー出て欲しかった」てな理由で没ネタに。まぢめに取り組めば出来るかも知れませんが・・・後述のような電源電圧≒300Vの“縛り”とか、前述のトランスレス点火・7p管統一など、決め事がネックに。身勝手と言やァそのと〜り。

「変わった?回路」好き・・・の自覚は残ってます。OTL好適管なら実現可能性がある回路なので、いずれは挑戦したいなあ。

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SEPPへの豹変

20100808〜

大して悩まんと、SEPPに決めました。30Vレス管シリーズの本命は30MP27なのですが、その習作的な意味合いでSEPPの“掴み”を実感したい・・・などと言い訳します。

30MP23_SEPP_1 前回が無茶な低負荷SRPPでしたので、無理の無い、出来る限り教科書的なSEPPアンプを心がけました。30MP23は30A5のEhk・Ppの強化版らしいのですが、電気的特性は変わらないそうです。見た目が同じ(文字が消えたら区別つかん)なので同様に扱うのが良いでしょう。

RL=400〜800Ω、Ebb≒300Vで3W前後かと計算しましたが、自己バイアスSEPPの最初の実験では2.6Wに留まる(RL≒500Ω)。

490Ω負荷への裸利得は51dbほど(A≒350)、2.2kΩの負帰還抵抗で大体26dbの仕上がりに。以下の実験も同様に進めました。

手頃なタマですがバイアスは13.5Vほどで、上下合計27V以上損してる。固定バイアスが良いのは明白だが、−C電源無しで済ましたいので、半固定バイアスを考えた・・・が、これは既に武末先生も昔お試し済みの手法でした。下は自己バイアス、上が固定バイアスっちゅう奴です。実はココで色気を出し、半固定バイアスを2種試しまして時間食いました。

30MP23_SEPP_2 Ebb≒300Vを分圧して上側球のバイアス電圧を得るトコロが、拙オリジナルと“思ってる”方式です。

旧来方式(後述)で避けられない・・・武末先生の文献で解析済み・・・、Ebb低下に伴う上下不平衡が緩和できるだろうと考えたのです。本機では浅いバイアスのAB級でしょうからその効果は期待せず、「妙な事」が起きないかどうかのお試しでした。

そして負帰還時に低域発振しました。時定数として関連しそうな容量を探っても見たのですが、完治に至らず「枯れた」方で進めます。今思えば、段間容量や初段Sgバイパス容量なども変えてみたら・・・今後の課題ですな。

30MP23_SEPP_3 こちらが「枯れた」回路方式。SEPP下側のEbを分圧してる、昔ッからある奴です。

負帰還時も安定。各部容量値が同じでも安定。ナニが違って安定するか解らず・・・心理的不安定な状態に。

「Ebb分圧式バイアス回路」と名付けたい方式の採用は、あっさり却下。でもまたやるつもりです。

最大出力は・・・これでも2.9Wにギリギリ到達した程度。ヤケクソで外部電源からの下側固定バイアスまで試しましたが、3W。う〜ん、いささか拍子抜けだ。これも今思えば30A5の多数サンプルで検証すべきだったかも。

上下固定バイアス化ついでに、22Ω負荷時を試し0.33Wでした。これは次に予定している30MP27・低負荷OTLに先立つ「掴み」を見たものです。更にその30MP27にも差し替えて・・・0.4W/22Ω?・・・えらく少ないな。3パラで3W/8Ωを考えていたが、こりゃ無理か?。

共用電源部 書き忘れました。電源は「30A5・SRPP」と同じものを使いまわします。コレが本当に重宝で、
次作予定の30MP27以外にも2〜3妄想してます。

回路は・・・2次120V巻線を直列にして、アンプシャーシ側でブリッヂ整流して、安かった400V820μF×4で平滑。負電源無いのでコレだけですから図面省略ッ・・・悪質な手抜きだ。

SEPP回路では避けられない「打ち消し」には述べておりませんでしたが、後の作品ではいささか触れたいと存じます。今回は「打ち消しをした」という程度に留めます。

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マッチングトランス試作

20101016〜

本機の最適負荷抵抗値は500Ω内外です。まあ、8Ωを直に繋いでも音は出るでしょうが、そんな無茶は「30A5・SRPP」に任せましょう。マットウにマッチングトランスを併用します。

まずは、頃合のが市販されているかですが、見つかりません。ノグチさん扱いの「PA-3」の存在は承知しておりますが、デカ過ぎます。その下の「PA-2」の2次に16Ωタップでも出てりゃ考えたでしょう。あとは・・・東栄さんには600Ω:8Ωのモノが2種。これらは1〜2Wの耐量なのでパス。中古やらオークションなどの素性の知れぬモノがHitするばかりです。そりゃノグチさんや、他の会社でも「頼めば」巻いてくれるでしょうが、値段が気になる・・・我侭だなあ。

生贄になるPT これは「超簡単・・・じゃ無くなった」「ボイド管SP」にも使った役得PTです。

1次100V:2次開放22Vなので、約160Ω:8Ωとして使用できます。最適値とは言いがたいので最終使用には躊躇いますが、「電源トランス」の音声帯域性能を点検してから判断しましょう。

測定回路1 言い訳がましいのですが、これが適切な測定方法なのかは不安です。特に、測定電圧や直列抵抗値などです。まあ、簡易チェック程度の意味しか持たないのかもしれません。

今回は小型だし、数100Ωのインピーダンス。直流重畳も無い・・・今後似たような試験をするなら、広帯域高出力のバッファアンプくらいは必要ですね。

生贄PT特性1 う〜ん、レスポンスはまあまあ?かも知れませんが、インピーダンスカーブは見事な単峰ピークです。使うと何か得体の知れぬ悪さを起こしそう。正直言ってどうなの?って感じです。旨く言えませんが・・・。

なお、上のレスポンス測定回路中の信号源電圧1Vrmsはマチガイだな、こりゃ。じゃあ何Vなのか・・・結果の数値から5Vrmsくらいかと思うが、メモランダムが不明確。言い訳がましいが。

生贄PT特性2 参考までに、1次+2次の直列使用時。高域レスポンスは悪化傾向。インピーダンスピークはホンの少し緩和、しかし「使う」気にはなれぬ。

書き漏らしです。1次DCRは≒11Ω、同2次≒0.13Ωですが、インピーダンス比換算のDCR分を加算しても、中域インピーダンスは高めに計測されました。理由は不明です。

測定回路2 これまた自信の無い測定回路。1次巻線端子電圧は、1Vrmsと7.1Vrmsの2点しか見ていない。インダクタンスはそれぞれ、≒1.85H及び3.77Hと見たが、さて・・・。

3行空けのために・・・こげなことを

一つのサンプルからの断定は拙速かと承知してはおります。ただ、「電源トランス」の範疇で良好な音声周波数特性の製品を、更に探すのもあまり良い選択とも思えません。実は「ボイド管SP」で試した「手巻き」経験から、今回の単純な仕様のマッチングトランスなら、手巻きに挑戦してみようかと考えました。

生贄の解体1 生贄の解体2 生贄の解体3

生贄の解体1 生贄のPT解体。今時普通のPT構造かもしれませんが、1次:2次間は分厚い樹脂ボビンで隔離されています。商用周波数ならまだしも、ン10kHz以上での磁気結合は考慮されていないって事なんでしょう。

解体の際に1次巻線の巻数を数えまして、500T。これを試作トランスの巻数に決定しました。なんて安直な。

巻線開始 巻線中1 巻線中2

↑ハンドルもカウンターも無し。何時代の機械か・・・西暦2010年代の巻き線機です。解体した内側ボビンを再利用し、層間にはHCで買ったクラフト紙使用、その厚みは考えてなかった。そして同HC購入のセラックニス使用、のちに「絶縁ワニス」の存在を知る。

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マッチングトランス巻線構想 なにしろコア素材仕様そのものが不明。低域レスポンスは良好なので、500T以上巻けば充分・・・と、えらく安易な判断。巻線収容部の寸法から「大雑把」に0.24〜0.3mmφの線径を見込み、部品屋店頭で0.29mmφのポリウレタン線を選ぶ。最初は1層あたり100Tを目指したが、0.29を選んだ時点で不可能となる。後はもう成り行きに任せよう。

おっと、T1が最内層、T11が最外層です。

怪しげではあるが、コア枚数など数値記録してました。

試作MT無策特性 1層あたり100Tは無理と承知で巻き始め・・・結局60Tにとどまりました。11層全660Tですが、4層を並列で8Ω出力としますので、480T相当かと考えます。最外層4組を8Ω出力にした特性です。

ぶっつけ本番としては望外の特性。低域は元PTより劣るが、まあ使用に耐えない程じゃない。高域は良く伸びて、Zピークもまあまあ。

試作MTサンドイッチ化特性 8Ω出力層をサンドイッチ化したもの。レスポンス、インピーダンス共に若干平坦に改善。実は8Ω出力層を更に細かく分散し、多層サンドイッチ化も念頭に置いていたが・・・疲れたのです。もうコレでいいや、と2個目もこの構造で進めました。

当然2個目の引き出し線は、巻き線作業段階で整理、下の写真がソレです。

見栄えがマシな2個目 写真は2個目の巻線。1個目は愚直にも11層分すべてのリード線を引き出しました。おぞましい見栄えなので撮影を却下。

3行空けのために・・・こげなことを

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アンプ本体の工作

20110103〜

LEADのP-311シャーシーです。実は本機用では無く、別ネタ(50BM8ppを考えてた)の計画変更で遊休になった物。毎度行き当たりばったりですな。H=70mmの深さがケミコン収納に適合し、旨い事行った。写真のトランスは試作マッチングトランスではなく、元PT。

仮置き ハメた1 ハメた2

ケミコンギリギリだ 収まるかや? 収めた

実態配線図メモ 収まったのは良いが、その深さは厄介。球数全8本も、この時点で自己最多。相当な混み様は覚悟してたが、手と頭のイイ訓練でもある。ただ目の酷使には参る。

もっと凄い密度の作品を拵えられる方を、WEB上で拝見しますが脱帽の思いです。左の平面実体予想?図以外にも前後側面からの図で、内部の立体的脳内イメージを描いております。でないと何れかの部品が干渉する・・・嘗ては良くやらかして、泣く泣く修正したモンです。今は?・・・「時々」程度に減りました。

3行空けのために・・・こげなことを

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アンプ本体の出来栄え

20110403〜

本件タイトルは「・・・SEPP」でして、「・・・OTL」と書かなかったのはタマタマですが、確かにこれは「OTLアンプ」ではありません。かりそめには「OTL」使用できる仕組みにしましたが、その運用をする気になりませぬ。

全回路図 整流平滑電源も含めた全回路、各部電圧です。特に凝ったところはありません。いや、簡略化のために全平滑容量・3280μFをぶち込んだ、いささか力づく設計かもしれません。規模に対しては過剰かと。

静止時の上下Ebは揃いませんが、クリップ波形を整えた結果なのです。浅めのAB級とはいえ、半固定バイアスの弱点かなとも思いますが、追求はサボります。

くどいけど、電源大元は東栄Z-05×2個。これの2次120Vをアンプ側で直列にしたAC240Vです。−電源を「無理して組んで上下とも固定バイアス」にしたって最大出力が大幅にUPするわけでも無し。いや、歪み率には関わるかも知れないが・・・。

出力2系統は、SEPP直接とMT8Ω巻線。間違えて直に8Ω繋いでも、0.1Wアンプになるだけさ・・・てな緩い運用基準。

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ボロ隠しの意図で、暗めの写真です。発熱部品は少ない・・・と楽観して、放熱孔を省いたツケが来ました。想定外のシャーシ温度です。真夏でも聴ける・・・とは言えんなあ。

完成後の詳細測定をサボったまま、音出ししてしまいました。無個性?の印象だったからか、以後・・・棚上げ、実際「棚の上」に乗せたまま放置プレイですな。試作報告としても不十分のまま、すみません。

30Vレス管シリーズ第三弾、「30MP27・OTL」に続きます。マットウな「低負荷OTL」です。

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