超簡単・・・じゃ無くなったTRアンプ

20070211〜


目次

2SA673と2SC1213
即日の豹変
プチ豹変 20070311〜
工作です 20070430〜
故障です 20121010〜


はじめに

前作に続き半導体工作です。タマ遊びを止めたのではありませんが、原始的な使い方ならTRも楽しめると実感したのです。まだしばらくは、1〜5石回路かなあ。

ところで、無駄に“凝った”仕掛品は、ど〜しようか。


2SA673と2SC1213

いずれも古い日立の石・・・おっと今はもうルネサス エレクトロニクスですね。お仕事では多少お世話になったのですが、ここ暫くは2SA1015・2SC1815に置き換える事が多く、出番の減った石です。

過日、先輩から「回路によっては673と1213じゃなきゃダメだぞ」との突っ込みをいただきました。調べてみるとIc定格が0.5A・・・おお、結構デカイんだ、と今更ながら自身の不明を恥じたものです。同時に「数Vの電源電圧で、100mW/8Ω何某のアンプが作れるかも?」と、仕事中ながらお遊びの妄想を始めてしまいました。本件の発端です。

2SA673 データーシートを眺めながら、こんな妄想のメモを書いてました。

『A673/C1213の特性がIc≒100mAまでは結構リニアなので、Vcc=5Vで50Ωの負荷線を引くとそんな値になります。+α足して12V位の電源電圧かなと。50Ωへの最大出力は250mWですが、8Ω負荷には42Ωの直列抵抗が必要で、50mW程度になっちゃうね。まあいいか・・・。さて、かつては手元にゴロゴロころがっとった2SA673が見つかりません。C1213は有るのにね。困った、買いに行くのも癪だし、別の「似た」TRを探すのもメンドーだ・・・まてよJUNKなら松下のB1317/D1975がころがっとったなと・・・ただしこいつはPc=150Wとゆー大出力用パワーTRですがな。規模が全然違いますがな。でも試しましょうかね。』

などと・・・

・・・2SA673と2SC1213はど=したの?

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即日の豹変

2SB1317 随分無計画な・・・でも、平気です。デカかろうと超簡単なアンプは作れます。A673/C1213レベルの電源で使用するだけのコトですね。

無作為に一組のB1317/D1975のHFEを簡易測定。まあ100以上はあるので可、おおらかな判断です。

之奴は100W/8Ω級に相応しい・・・実際そんなセットの補修部品ですが“闇”の鵜飼迂回経路にて入手。おっとこれ以上は・・・

超簡単回路1 超簡単なのかどうか、コンプリSEPP出力段そのものです。アンプというよりバッファ的なもの・・・意図を白状すればCDプレーヤーのH/P出力でSPを鳴らしたいのです。ソコソコのプレーヤーなら、ン10mWは出るようなのでMAINの97dbシステムは結構な音量で鳴りますが、90db未満のSPでは蚊が鳴くくらい。

具体的には、4556系OPアンプ出力から数10Ω〜100Ωの直列抵抗を経て、H/P・JACKに至る回路の“普及モデル”を想定してます。10kΩ程度で受けると、0dbFS>4Vrms出てくれたのです。8Ω負荷に2W以上は堅い。

2SC1213はリプルフィルター兼スロースタートのつもりです。単電源ですからね。

回路1実験中 実験機は右下端。左(真ん中?)はTRブースターアンプです。

実験基板のTR上面には、バイアス電圧生成のダイオード2種。左のは・・・品番不明ですが、まさしくこの用途形状してます。ただし放熱器ナシでは・・・100Wデバイスでも1W食うと、それなりの発熱です。暴走は怖いぞ。それでエミッタ抵抗1Ωから。

超簡単回路1測定データ 予想はしてたような、してないような・・・どこかで見た気もする歪み率カーブ。ただ、電源電圧の低下も著しいのでそれもウネリを助長してるのかも入れません。

まあ、20Vあれば3W!は出ることが解りました・・・って、設計計算してないんかい。それはさておき、単段SEPPでは入力インピーダンスが低く、相当非線形なのが「実感」出来ました。

3行空けのために・・・こげなことを

真面目にやるなら、入・出力インピーダンス、F特をみるのが良いと・・・解っていながら省略。即、ダーリントン接続を試します。

超簡単回路2 “超簡単”のお題目は、ウソ八百になりつつある選択。入力インピーダンスが信号源を“歪ませる”ちゅうのは嫌です。

4W/8Ω未満の出力段ならB1317/D1975のベース電流<5mAでしょうから、ゴロゴロ転がッとるA1015/C1815でも事足りるのですが・・・。100W級デバイスに相応しいドライバーとなると・・・こうなる。偶然の手持ちあっただけなのです。

超簡単回路2測定データ1 出力段エミッタ抵抗を、1Ω→0.47Ωに減らした手探り中特性です。半ば恐々やってる段階。歪みはチョッと減りました。

ブースターアンプを省略して、VP-7720Aの直接ドライブを試しましたから1W未満まで。入出力の歪み率から、ダーリントン接続の効果はあると実感します。ただし非ダーリントンの@では、この調べ方してないので片手落ちではある。

超簡単回路2測定データ2 出力段エミッタ抵抗を、0.47Ω→0.22Ωに減らした手探り中特性です。大丈夫だと確信したのでコレを最終値としましょう。

入力部の歪みを見てないのは何故だったか思い出せません。熱的に安定と見たので、Icoを増やしたかったのでしょう。

超簡単回路2測定データ3 同じくVP-7720Aドライブ。5Hz〜159kHzまでの中途半端は、FG-270のアナログダイヤルによる周波数設定に信頼が置けないため・・・と言い訳します。

1000μFと8Ω負荷の、Fc≒20Hz−3db落ちに当たらずとも遠からズ。SEPPの出力インピーダンスは低いと予感できます。なお、エミッタ抵抗値の差が出ないので、0.47Ω時のデータです。

超簡単回路2測定データ4 出力インピーダンスは注入法で。

ドライブインピーダンス違いで、出力インピーダンスが若干変化する様子も見まして、1kΩ未満では殆ど差は無い様子。左のデータはVP...の600Ωドライブって事です。

タマアンプばかりいぢって来た身としては、あっさり0.5Ω未満が得られる事に驚くやら、うらやましいやら・・・。いや、別に低出力インピーダンス信奉者ではありませんが。

出力コンデンサ1000μFの影響は↑大きく見えます。10000μFに増やしても一桁左に移動する程度・・・と思うと頭が痛い。

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プチ豹変

20070311〜

実験しながら回路変更を模索。使用予定の電源トランスの2次22V巻線に、センタータップが無いので、フツーの±電源が得られません。実験回路のまま出力C付きで進める選択もアリですが、面白みに欠ける・・・。少々強引ですが、電源非接地でこんなのをやってみようかと。

超簡単回路3 出力両端に接続されたVRが、イタズラ半分の箇所。TR側を接地すると、面白い。電源側を接地すると・・・つまらない?。

8行空けのために・・・こげなことを

元ネタは・・・・・・・・・・・・↓

ラ技1995年10月号で、故・藤井秀夫氏による「逆立ち式出力によって超シンプル化 ソース接地MOS-FET単段40Wパワーアンプ」が掲載されています。氏は以後も数例、同様形式の作例を発表されており、お気に入りの方式・・・と読みました。

氏の文中には上らなかったようですが無実1984年9月号で、新井晃氏が「単段OTL」と題して紹介されている回路と同じかと存じます。10年の時を経て、両氏は独自に共通する発想をされた事には、ひれ伏す他ありません。大元の動機は、無帰還動作への渇望なのかなと感じます。

MOS-FETのソースフォロワー回路(TRならエミッタフォロワー)に疑問をお持ちの方は、多くはないでしょうけれども、「極めて少数」でもないと思っています。そして、各自の持論がお有りなのでしょう。先の両氏も誌面で述べられています。今ここで、自身の・・・を問われると、正直困ってしまいます。深いメッセージなど無いのです。それでも試したい欲求に駆られてしまう、何かを内包する回路かと。

回路3で拵えた その出力TR近傍 組み替えました。

ソコソコの放熱器を充てて、ちょっとは真面目に進めます。電源はLUXKIT・M-6Pからの±15V、ただし「COM接続無し」の30V単電源動作です。

出力TRの両コレクタ間をバイパスするのは、回路図に書き忘れた4.7μF、効いているのかど〜かは未確認。

超簡単回路3測定20070415 超簡単回路3測定20070416 VP7720Aダイレクトでの上限と、M-6Pの容量上限0.2Aにより、1Wまで。エミッタ接地の利得が20dbほどだった。ちょうどその差が歪み率数値差に見える。

Noisも0.01mVと0.1mV、タマタマなのか?。

と、まずは掴みが出来ました。実はバイアス回路に「2SC3964・スイッチング用ソレノイドドライブ用オーディオアンプバイパス温度補償用」用途とデーターシートに書かれているものです。ダーリントンTRでは無いのですが、HFEは巨大です。ただ、それでも1mA未満の動作電流では不足でしょう。電源電圧の30V→27V変化で、出力段Icoは100mA→75mAに。ナントカせねば。

注:バイパス温度補償云々は「バイアス・・・」、の誤植でしょう。東芝原本が訂正されて無い様子

超簡単回路4 電源をM-6Pから、件のAC22V電源トランスに交換。SEPP段電源電圧は±12〜13V、バイアス電源は±40Vあたりに留まります。

ハム(リプル)が出ますが電源側接地モード時0.02mVと、エミッタ接地モード時0.2mVなので致命的ではない。平滑Cを4700μFx2に増量はしたいが。

懸案事項のバイアス安定性ですが、AC100V→90Vに対し、Ibo100mA→85mA。AC100V→110Vでは100mA→120mAでした。う〜ん、多少は改善できたみたいですが、イマイチですな。本音はAC電圧変化割合と同一以内を望んでますが・・・

100mA設定時のバイアス回路に流れる電流は1.64mAでして、確かに充分とは言えません。バイアスTRには1.7mA弱ではまだ内部抵抗が高いんでしょうね。まあ普通の設計では5mA以上でしょう。かといって、22KΩを下げる気は無いし、電圧を更に上げるなんざ・・・多分今の3倍上げるとなると±100V以上?!・・・これはやりすぎですよねえ。

言い訳:22kΩを定電流回路にすれば良いとは解ってて、固定抵抗に拘ってます。面倒だから・・・と言う理由です。テストをする限り、最適ではないが差し支えないと腹をくくりました。これで進めます。

超簡単回路4測定20070430_1 超簡単回路4測定20070430_2 Icをパラメータに。教科書的な違いを見たかっただけかも。電源接地モードとエミッタ接地モードに、一桁の差が出たのは興味深い。

エミッタ接地ではVP-7720Aで最大出力を得られますが、電源電圧低下により3Wが上限。無信号時Ico<200mAでは放熱器の余裕も無い感じ。でも、大げさにしたくない・・・わがままですな。

3行空けのために・・・こげなことを

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工作です

20070430〜

前後左右が露出した「危険」な構造ですので、真似されると困ります。責任を追及されたらどうやって逃げようか。

super_easy1 super_easy2 super_easy3 super_easy4 super_easy5

基材は「FS150-500」の品番で、80年代に買って・・・死蔵のアルミパネル。t=2.3mmで、結構硬い感触。半分に切って、上下をメタルサポートで組んだだけ。100mA動作を上限とし、放熱器は「下パネルのみ」の手抜きしました。今はまだ良いが、夏場にどうなるか。

super_easy6 super_easy7 super_easy8 super_easy9

開放構造なので、LED内蔵。夜間は目障りなほどに眩しいが、日中は目立たぬ。エミッタフォロワ⇔エミッタ接地の動作変更は、連続可変(100Ω巻線VR)です。中央では6dbの利得の・・・なに動作?。

超簡単回路5 回路Cと殆ど変らぬ最終版。

技術的検証を逃げていますが、エミッタフォロワ動作以外では、バイアス回路を通じて入力部に「電圧負帰還」がかかってる様子。信号源インピーダンスが低ければ、微々たるもの「だろう」と楽観。自宅機のH/P出力は、4556系の後ろに2分割・計100Ωの直列抵抗と判明し、以後の考察を放棄。

超簡単回路5測定20070527L 超簡単回路5測定20070527R 珍しく入出力特性を測定。

上記↑の関連で言えば、VP-7720Aの600Ω出力での動作は微妙だったかもしれません。ここに掲げた「エミッタ接地」動作の増幅度は“600Ωの信号源インピーダンス時”と、注釈が必須か?。

送り側Z=50Ω〜1kΩなどで、各種測定を・・・するド根性はありません。ただ、Zo<100ΩなどのH/P出力では、エミッタ接地モード時の利得は少々増えると想像できます。

以上で完成です。最終F特や、ひずみ率などの記録をサボりました。実験で得た性能は発揮されております。Rch側はPTに近いからか、ハム混じりの0.022mV/0.32mV。Lchは、その半分。

拵えたこの子には申し訳ない話ですが、音に対する感想が無い。いたって普通の音です。後にサブSPとなった「ボイド管SP」の相方として、心地よく「おやすみ音楽」を聞きながら・・・寝ていました。せっかく取り入れたエミッタ接地動作は、情けない事に、殆ど使っておりません。

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故障です

20121010〜

当時の実験メモから引用します。

『永らく“お休み音楽用”のアンプでした。累積稼動時間では最長の自作機かも知れない。なお、今年になってからは別PC用に流用、そのPCの移設に伴い、昨晩お休みアンプに復帰・・・したらON時に「ブン・・・」音した。

今日、点検しましたらLchにON時の「1秒ほどで収束」する+数Vのオフセット電圧が見られた。Ico≒30mA未満と変だ。Rchは正常で、Icoも完成時の約100mAを維持してる。OFF時もLchで−2V未満ほどの出て2秒くらいで収束。他の自作機の故障は・・・多くは稼動時間が少ないので何とも言えんが珍しい。当然ながら気分はよろしくありませんな。』

と。

その後の中身 見せたくなかった基板ウラ。クローズUPしない、光源の手当てや高解像度撮影もしない。

故障の原因は、整流平滑電源のCOM点(GND点・・・と書くと、エミッタ接地モードで矛盾する)に集中する配線のどれか、又はその周辺の基板裏打ち?の半田付け不備かと思ふ。ピンポイントで確定できないのは情けナカ。

底パネルに新設した基板は、テストタップです。N/Pch両方のエミッタ間電圧でアイドリング電流を読みます。

余談ですが、エミッタ接地モード時の、“意図しない負帰還”を無くそうと改造を加えた事があります。±40V以上の接地電源からバイアスを与えればエエだろ?・・・と、件のPTの遊休巻線を集めてン倍電圧整流で・・・。±45Vを得て試しますと、そおか・・・オフセット出るか・・・。

対地で上下同じバイアス電圧が確定すりゃ、SEPP出力段は・・・N/PchごとにHFEに応じた電圧負担をしますよね〜・・・と思うが、これ以上の追求は断念。やるなら専用設計を基礎に「別ネタ」として、ですな。道草してドブに嵌った感じ。

その後の脚 夏場の100mA設定が危ないと感じたので、暑い間は50mAで聴いてました。別に“悪くなった”とは感じませんが、心情的には100mAで聴きたいので手頃な放熱器を追加。しかし足しても・・・極端に冷めた気がせぬ。

一度ならズとも「もげた」事があるゴム脚を、両面テープ貼りからマットウなネジ止めに替えた痕。残る両面テープを除去しない“センス”に我ながら・・・。

左側に垂れた黒線は接地線のナニカだが、外れたままでフツーに働く。ドコとの接続か・・・思い出せませぬ。

測定機材が替わったのに、再測定をサボってます。いや、最終機としての詳細も見てませんから、掲示もしてない手抜き。不憫な扱いです。

“お休み音楽再生”用途も別セット(自作機ぢゃないから書かない)に交代し、棚の肥やし・・・。そして、ソコソコの広帯域・低出力インピーダンス性能から、時折自作機の出力インピーダンス測定用信号電流注入アンプに「甘んじて」ます。その出番も専用機の、広帯域「風」バッファに置き換わり・・・ますます不憫な境遇に。

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