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Artist

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Title

DISCOTHEQUE 71


discoteque71
Japanese Title

ディスコテーク71

Date 1971
Label SYLLART/MELODIE 38209-2 (FR) / メタカンパニー XM-0247(JP)
CD Release 2000
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 この手の音楽CDを購入するあたって、前もって試聴できる機会はそんなに多くない。だから、音楽のコンセプトなり情報なりをヴィジュアルで伝えるジャケットの役割はとても重要だ。ところが、この点にかんしてアフリカ・リリース盤はかなりルーズ。そんな欠点をアーティストのこゆーいポートレートでカヴァーしている場合も少なくはないのだけれど、ディスコテーク・シリーズにかんしてはオムニバスの性格上、キャラ勝負に出るわけにもいかず、結果、見るも無残なジャケットのオンパレードになってしまっている。
「この無意識100パーセントがいいんじゃ」というひともなかにはあろう。それはわたしも認める。だが、背表紙を"DISCOTHEQUE72"とミスプリントして、平然としているというのは問題なんじゃないでしょうか。
 
 演奏者と曲名をのせただけの布に似せた色とりどりの切れ端を無作為に並べてみたとしか思えないジャケット・デザインは、「このシリーズまたはアーティストについて情報を持たない者は買うな」といわんばかりの敷居の高さ。当たり前だが解説のたぐいはいっさいなし。それってすごくもったいないことだと思う。だから、すこしはお役に立てればと、こういうサイトを立ち上げたというわけです。

 このやりがいのあるアルバムは、全11曲中、前半部にベンベヤ・ジャズ・ナショナルケレチギとタンブリーニバラとバラダンのビッグ・ネームの演奏2曲ずつ計6曲をまとめて収録。かれらの演奏が傑出しているものだから、後半しりすぼみになりアルバムとしてのバランスはお世辞にもよくない。

 ベンベヤ・ジャズの'N'BORIN''DAGNA'は、かれらにしてみればサラリと流した感じで、派手さはないがラテン風味のキャッチーなメロディが印象的な小品。軽さと奥ふかさをあわせ持ったデンバ・カマラの歌い口は、「スナッキーで踊ろう」での地獄の名唱によってわれわれの心胆を寒からしめたあの伝説の歌手、海道はじめとかぶっているではないか!セク・ジャバテのギターも相変わらずすばらしい。

 ケレチギの'J.R.D.A'はアルバムの冒頭を飾るにふさわしい充実した内容。コロコロしたバラフォンをフィーチャーした明るいラテン調のこの曲を聴いて、トリニダードのスティール・ドラムはバラフォンの音を模倣したんじゃないかと思った。偶然だろうが、ややツッコミ気味のビートが、60年はじめにキューバから波及しニューヨークのラテン音楽シーンで大流行したパチャンガを思わせる。アフロ・キューバン・ジャズバンド・スタイルのぶ厚いホーン・アンサンブルがすばらしく、シンコペートするリズム・セクションも絶好調。テナー、ソプラノ・サックス、バラフォン、ギターの順に明け渡されるソロも悪くない。
 めずらしくスペイン語で歌われる'LA BYCICLETTA'は、かなり真っ当なキューバン・サウンド。ためこんでくり出すようなリズムのとりかたといい、モントゥーノに相当する部分があったりというようにセステート・アバネーロセプテート・ナシオナールなどのソンへのケレチギの心酔ぶりがうかがえて興味ぶかい。スペイシーな南国的スティール・ギター・ソロも涼しげ。名曲です。

 バラとバラダンの'MOI 9A MA FOUT'は、「エライヤッチャ、エライヤッチャ、ヨイヨイヨイヨイッ」と思わず掛け声したくなる、ひたすらせわしないリズム。このゴッタ煮加減、なんか服部良一にはじまるジャズ民謡とか、見砂直照と東京キューバン・ボーイズのラテン民謡に通じるテイスト。寺内タケシをも凌駕するむちゃくちゃかっこいい超絶早弾きのギター・ソロはもしかしてセク・ジャバテ?パーカッションがくり出すドライヴ感が抜群の名演。
 一転して、'SAKODOUGOU'は初期のバオバブを思わせるけだるいラテン・フレイヴァーの曲。イスラム風の旋律とコブシをともなったせつないヴォーカル、メランコリックなギターと哀愁のサックスがすばらしい。

 ここまでの3組の演奏にくらべると、残り3組5曲はどうしても格落ちの感がぬぐえない。だからといって、悪いっていうんじゃなくて、前の3組の演奏がよすぎるのである。

 ミリアムズ・クィンテートは、政治的理由によりアメリカ合衆国での音楽活動がむずかしくなったミリアム・マケーバが一時ギニアへ身を寄せたさいに、元バラダンのメンバーたちで結成された彼女のバック・バンドのことだろう。4拍子系のビートにのせてシンプルなメロディが反復されるだけのインスト・ナンバーで、アルバムではインタールード(間奏曲)のような役割を果たしている。

 バフィン・ジャズ・マムーは聞き覚えのないグループだが、しごくオーソドックスなギニアン・ルンバ2曲を演奏。セク・ジャバテの影響を受けたギターはまあ健闘といえるものの、サックスは不安定だし、なによりもヴォーカルがアカ抜けてなくて声に伸びが感じられずB級の域を出ていない。

 パパ・ジャバテとセク・ジャバテによるアコースティック・ギターのデュオ、ヴィルチョーズ・ジャバテの'NADIABA'は、いやし系インスト・ナンバー。しかし前作"DISCOTHEQUE70"で17分におよぶ長い曲を聴かされた身には、この6分22秒はちょっとマンネリかな。それよりも、ギターの伴奏にあわせて、少女の遊び歌のような素朴なヴォーカルで紡がれていくラストの'SANKARANKA'のほうがずっといい。心にしみます。


(5.30.03)



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by Tatsushi Tsukahara