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Artist

NINO RIVERA Y SUS CUBANS ALL STARS

Title

CUBAN JAM SESSION VOL.3



Japanese Title キューバン・ジャム・セッションVOL.3
Date 1960?
Label ボンバBOM307(JP)
CD Release 1993
Rating ★★★★
Availability ◆◆


Review

 パナルトの『キューバン・ジャム・セッション』シリーズ第3弾は、トレスの名手ニーニョ・リベーラ名義のアルバムで、個人的にはシリーズ中もっともしっくりくる。ちなみに、第4弾はカチャーオのよく編曲が施されたアルバム(BOM306)、第5弾はフルート奏者ファハルドをリーダーとするチャランガ楽団のレギュラー・メンバーによる演奏(BOM308)で、アルバムとしての出来とは別に、本来の意味でのデスカルガとはいいがたい。

 リーダーのニーニョ・リベーラは、1919年生まれ。30年代にはセステート・ボローニャ、セステート・ボレーロでプレイし、50年代のはじめ、アルセニオ楽団にいたフェリックス・“チョコラーテ”・アルフォンソとコンフント・モデーロを結成するが、ほどなく脱退。ダンソーンからソン・モントゥーノまで、どんなタイプの音楽も器用にこなせたことから、セッション・プレイヤーとして超売れっ子だった。また、作・編曲にも非凡なところをみせ、コンフント・カシーノ、アルカーニョ・イ・スス・マラビージャスオルケスタ・リバーサイドなどの編曲にも手がけている。

 本盤のレコーディングからおよそ20年後におこなわれた新旧オールスターによるセッション『エストレージャス・デ・アレイート』(ワーナー VPCR-19006/7)でも、リチャード・エグエスやタタ・グィネスらとともに参加し、元気なところを披露している。96年に世を去るまで、トレスを片手に渡り歩く名プレイヤーとして第一線で活躍しつづけた。

 ところが、自己名義のリーダー・アルバムはというと、本盤のほかには、2000年にスペイン・ヴァージンからセネーン・スアーレスと抱き合わせで出た"GRANDES ORQUESTAS CUBANAS 2"(SONORA CUBANA/VIRGIN 850818-2)収録の1枚と、1980年にキューバ・エグレムに残した"NINO RIVERA Y SU CONJUNTO"(EGREM CD0106 、かつて『ヌエボ・ソン』のタイトルでボンバから国内発売されていた!)ぐらいしかわたしは知らない。

 前者は、『キューバン・ジャム・セッション』とほぼ同時期の59年の演奏を収めたもので、トレス・プレイヤーとしてよりも、作・編曲者、プロデューサーとしてのリベーラの才能が遺憾なく発揮された知られざる名盤。レギュラー・バンドではなく、コンフント・カシーノ、アルカーニョ・イ・スス・マラビージャスなどから集められたセッション・バンドによる演奏と思われるが、かなり緻密に編曲が施され、サウンドもよくこなれている。ソン・モントゥーノ、グァラーチャ、コンガ、マンボのようなリズミカルな曲と、ムーディなボレーロがほぼ半分ずつ収録され、トランペット、トロンボーン、サックスが織りなすぶ厚いアンサンブルとパーカッションが絡まり合い、むせるほど濃厚なキューバ色を演出。

 フランク・ガルシアほかのヴォーカルも適度な湿気とコクがあって悪くない。リベーラのトレス・ソロがたっぷり聴けるデスカルガっぽいソン・モントゥーノ'MONTE ADENTRO' は、『キューバン・ジャム・セッション』冒頭の'MONTUNO - SWING' と同一曲。ここではエレキ・トレスを弾くが、これまたよだれが出るほどかっこいい。録音状態も良好。

 エストレージャス・デ・アレイートの成功を受けて制作されたと思われる後者には、革命後の若手ミュージシャンに混じってミゲリート・クニー、グスタボ・タマヨなど旧知のベテラン陣が参加。リラックスしたなかにも、忘れ去られようとしているソンやグァラーチャの伝統を現代風にアレンジして蘇らせようとするリベーラの意気ごみが伝わってくる好盤。昨今の“ブエナ・ビスタ”ブームでふたたび脚光を浴びているコンパイ・セグンドやイブラヒム・フェレールの最近のアルバムのように“ジジ・キューバ”化していないところがいい。

 さて、ようやく『キューバン・ジャム・セッション』にたどり着くことができた。本盤には、ピアノにカチャーオの兄オレステス・ロペス、フルートはオルケスタ・アラゴーンの名手リチャード・エグエス、コンガにタタ・グィネスほか、トランペット、サックス、ティンバーレス、トゥンバドーラなどのプレイヤーが参集。シンプルなコンフント編成によるデスカルガであるうえ、リリカルなフルートが加わっているせいか、さきの同時期の録音に較べると、いかにもリラックスしたその演奏は小気味がよいというか、サラリとした印象を受ける。

 収録曲は、'MONTUNO - SWING''MONTUNO GUAJIRO''CHACHACHA MONTUNO''GUAGUANCO - COMPARSA' の4曲構成で、リベーラのシャープでハギレのいいトレスを中心に、これぞ職人芸という感じのスリリングなインタープレイを展開。リベーラ自身、もともとダンソーン系出身だったらしく、アルセニオのようにドス黒さはないが、飄々としたクールさがひたすらでかっこいい。


(12.17.01)



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by Tatsushi Tsukahara