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Artist

PIO LEYVA

Title

SABOR A MONTUNO


leyva virgin
Japanese Title 国内未発売
Date 1950s
Label SONORA CUBANA/VIRGIN 8485692(EP)
CD Release 1999
Rating ★★★☆
Availability ◆◆◆


Review

 1979年、アフリカ人プロデューサー、ラオール・ディオマンデーが、キューバの国営会社エグレム傘下のアレイート・レーベルに所属するミュージシャンたちを召集してエストレージャス・デ・アレイートのプロジェクトを実現させるにあたり、必要不可欠な人材としてあげたのが、オルケスタ・アラゴーンのフルート奏者リチャルド・エグェス、トロンボーン奏者でエグレムのスタッフ・アレンジャー、プロデューサーであったファン・パブロ・トーレス、それにピオ・レイバであったという。

 「エル・モントゥネーロ・デ・クーバ」(キューバのモントゥーノ歌手)とニックネームされたレイバは、50年、ハバナへのりこむや、コンパイ・セグンドマリアーノ・メルセローンニーニョ・リベーラなど、名だたるミュージシャンたちの楽団をバックに歌い、有名クラブ、ラジオ、テレビでひっぱりだこの人気者となった。

 聴けばわかるとおり、レイバの唱法はベニー・モレーの影響をつよく受けている。ソン・モントゥーノを中心に、オルケスタが奏でるダイナミックなサウンドと張りあうように、朗々と歌うさま、なかでもモントゥーノの部分はベニー・モレーそのものといってもいいくらい。だが、レイバの名誉のためにひとことつけ足しておきたいのは、そのくらいにベニー・モレーという不世出の歌手の存在が大きかったということだと思う。

 決定的なちがいは、モレーにくらべて高音域での声の伸びがいまひとつ足りないこと。「リズムの野蛮人」'EL BARBARA DEL RITMO'と形容されたモレーだが、いっぽうでボレーロを歌うときはとくに女性的で繊細な面が顔を覗かせ、一瞬ゾクッとするような色気を発していた。しかるに、レイバは声を吐き捨てるような感じがあって、どこを切っても「オトコ、オトコ、オトコ」という具合である。

 だからかどうか、1950年代のおそらく後半に、ベボ・バルデース(チューチョ・バルデースのおとうさん)率いるオルケスタ・サボール・デ・クーバの伴奏を中心とした本盤を聴くと、はじめこそ歌と演奏の迫力に圧倒されるが、聴きすすむにつれ、みな同じように聞こえてきて飽きてしまうのだ。

 本盤とほぼ同時期に録音されたと思われる"EL MONTUNERO DE CUBA"(TUMBAO TCD-803(EP))というアルバムがトゥンバオからリリースされている。こちらは、メルセローンやリベーラの楽団をバックに歌った曲も混じっているものの、半分近くがヴァージン盤と重複している。そのせいか、どちらも似たような雰囲気で、正直いって、これらのどちらか1枚もっていれば十分という気がする。

 2枚のうち本盤を選んだ理由は、トゥンバオ盤の収録曲数16曲にたいして本盤は2曲多い18曲であること、プエルト・リコの名作曲家ペドロ・フローレスが書いたボレーロ'BAJO UN PALMAR' と、ドミニカ共和国が生んだメレンゲの王様ルイス・カラフの作品'LA PICAZON' が入っていることの2点である。あとはこっちのほうがジャケットが好きということぐらい。

 レイバは、いい歌い手だとは思うのだが、ディオマンデーがいの一番に挙げるほどのタマかというと疑問符だ。ミゲリート・クニーを差しおいて、まずレイバだった理由がどうしてもわからない。
 とまあ、レイバの悪口ばかり書いてしまったが、くれぐれもいっておきますが、それなりにうまい歌手でありますんで、ベニー・モレーが好きなひとは買ってみる価値は十分にあると思います。


(8.8.02)



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by Tatsushi Tsukahara